電験三種 H29年 機械 問2 問題と解説

 問 題     

界磁に永久磁石を用いた磁束一定の直流機で走行する車があり、上り坂で電動機運転を、下り坂では常に回生制動(直流機が発電機としてブレーキをかける運転)を行い、一定の速度(直流機が一定の回転速度)を保って走行している。

この車の駆動システムでは、直流機の電機子銅損以外の損失は小さく無視できる。電源の正極側電流、直流機内の誘導起電力などに関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  1. 上り坂における正極側の電流は、電源から直流機へ向かって流れている。
  2. 上り坂から下り坂に変わるとき、誘導起電力の方向が反転する。
  3. 上り坂から下り坂に変わるとき、直流機が発生するトルクの方向が反転する。
  4. 上り坂から下り坂に変わるとき、電源電圧を下げる制御が行われる。
  5. 下り坂における正極側の電流は、直流機から電源へ向かって流れている。

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説    

直流機のうち、直流電力を使って動力を生み出すものが直流電動機、反対に外部からの動力を受けて発電するための機器が直流発電機と呼ばれます。いずれも基本的な構造や原理は同じで、直流機を外部電源につなげば直流電動機として働き、負荷につなげば直流発電機として働きます。

以上を踏まえて、選択肢をひとつずつ確認していきます。

(1)と(5)について、(1)は上り坂なので電動機、(5)は下り坂なので発電機として働きます。電動機は電源から電力をもらって動き、発電機は逆に電源へ電力を供給するため、これらの記述はどちらも正しいです。

ちなみに、この問題は間違っているものを「1つだけ」選ぶ問題なので、(1)と(5)のように互いに対応する記述があるときは、これらは答えになり得ません。もし(1)が誤りの記述なら、それに対応する(5)も誤りになって、正解の選択肢が2つになってしまうからです。

(2)に関して、直流発電機の電機子に発生する起電力を誘導起電力といいます。また、直流電動機の電機子に発生する起電力を逆起電力といいます。誘導起電力と逆起電力は名前こそ違いますが、これの意味するところは同じです。

上図の等価回路にも表したように、直流電動機になるか直流発電機になるかは誘導起電力(逆起電力)EがVよりも大きいか小さいかで決まります。

よって、(2)にあるように誘導起電力の方向(正負)が反転するわけではなく、上り坂から下り坂に変わるときは誘導起電力の大きさが増加するだけなので、これが誤りの記述です。

(3)で、直流機のトルクの式は重要公式としてぜひ覚えておいてください。

  • T:トルク[N・m]
  • k:比例定数
  • Φ:磁束[Wb]
  • I:電機子電流[A]

上式より、電流Iの向きが変わればトルクの方向も反転するため、(3)の記述は正しいです。

(4)は上図の等価回路を参照するとわかりやすいと思いますが、上り坂から下り坂に変わるときはEが大きくなりVが小さくなるとよいので、電源電圧Vを下げる制御は有効であり、正しい記述といえます。

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