電験三種 H29年 電力 問10 問題と解説

 問 題     

交流の地中送電線路に使用される電力ケーブルで発生する損失に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  1. 電力ケーブルの許容電流は、ケーブル導体温度がケーブル絶縁体の最高許容温度を超えない上限の電流であり、電力ケーブル内での発生損失による発熱量や、ケーブル周囲環境の熱抵抗、温度などによって決まる。
  2. 交流電流が流れるケーブル導体中の電流分布は、表皮効果や近接効果によって偏りが生じる。そのため、電力ケーブルの抵抗損では、ケーブルの交流導体抵抗が直流導体抵抗よりも増大することを考慮する必要がある。
  3. 交流電圧を印加した電力ケーブルでは、電圧に対して同位相の電流成分がケーブル絶縁体に流れることにより誘電体損が発生する。この誘電体損は、ケーブル絶縁体の誘電率と誘電正接との積に比例して大きくなるため、誘電率及び誘電正接の小さい絶縁体の採用が望まれる。
  4. シース損には、ケーブルの長手方向に金属シースを流れる電流によって発生するシース回路損と、金属シース内の渦電流によって発生する渦電流損とがある。クロスボンド接地方式の採用はシース回路損の低減に効果があり、導電率の高い金属シース材の採用は渦電流損の低減に効果がある。
  5. 電力ケーブルで発生する損失のうち、最も大きい損失は抵抗損である。抵抗損の低減には、導体断面積の大サイズ化のほかに分割導体、素線絶縁導体の採用などの対策が有効である。

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説    

ケーブルによる地中送電での損失には、抵抗損、誘電体損、シース損の3種類があります。

選択肢(1)は損失についての基本的事項が、(2)と(5)には抵抗損のことが、(3)には誘電体損のことが書かれていて、どれも正しい内容です。

残る(4)はシース損のことが載っていますが、この内容が誤っています。

シース損は、ケーブルの金属シースに誘導される電流による発生損失です。ケーブルに電流を流すとその周りに磁界が発生しますが、これによりシースに電磁誘導が起こり、起電力が生まれます。

この起電力によって回路電流と渦電流が流れますが、これらの電流による損失がシース損と呼ばれるため、(4)の1文目の記述は正しい内容です。

シース損を低減させる方法として、クロスボンド接地方式の採用が効果的です。これは、クロスボンド接地方式を用いることでシース電流同士を打ち消し合うことができるからです。

また、シース損の損失エネルギーはケーブルを流れる電流に比例しますが、CVTケーブルを使うと各ケーブルの周りの磁界が打ち消し合うため、起電力がほとんど発生せず、シース損もほぼ生じません。

よって、(4)の2文目の前半も正しいですが、後半の「導電率の高い金属シース材の採用」が誤りで、これでは渦電流損の低減につながりません。

電気を流しやすい金属のシース材ではなく、電気を通しにくいCVTケーブルなどを使うことが推奨されます。

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