電験三種 H29年 電力 問9 問題と解説

 問 題     

次の文章は、架空送電に関する記述である。

鉄塔などの支持物に電線を固定する場合、電線と支持物は絶縁する必要がある。その絶縁体として代表的なものに懸垂がいしがあり、( ア )に応じて連結数が決定される。

送電線への雷の直撃を避けるために設置される( イ )を架空地線という。架空地線に直撃雷があった場合、鉄塔から電線への逆フラッシオーバを起こすことがある。これを防止するために、鉄塔の( ウ )を小さくする対策がとられている。

発電所や変電所などの架空電線の引込口や引出口には避雷器が設置される。避雷器に用いられる酸化亜鉛素子は( エ )抵抗特性を有し、雷サージなどの異常電圧から機器を保護する。

上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)及び(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

    (ア)    (イ)    (ウ)    (エ)

  1. 送電電圧  裸電線   接地抵抗  非線形
  2. 送電電圧  裸電線   設置間隔  線形
  3. 許容電流  絶縁電線  設置間隔  線形
  4. 許容電流  絶縁電線  接地抵抗  非線形
  5. 送電電圧  絶縁電線  接地抵抗  非線形

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説    

がいしとは、電線と支持物(鉄塔や電柱)との間に取り付ける装置で、両者の間を絶縁する役割を果たします。これは電圧階級に応じて複数個を連結して使用するので、( ア )には「送電電圧」が入ります。

架空地線というのは、送電線のてっぺんから延びる接地線です。これは落雷の防止、誘導雷の防止、送電線の電磁誘導障害の低減などの効果があります。

( イ )に入るのは「裸電線」か「絶縁電線」がですが、この架空地線は雷の電流を大地へと誘導し、送電線へのダメージを避けるために設置されるものなので、架空地線自体には電気が流れないといけません。よって、( イ )には「裸電線」を入れるのが適切です。

逆フラッシオーバとは、架空地線や鉄塔に雷撃があった際に接地抵抗が高いと、架空地線や鉄塔の電圧が上がって送電線に対して放電してしまうことをいいます。よって、鉄塔の接地抵抗を小さくすれば逆フラッシオーバが起こりにくくなるので、( ウ )は「接地抵抗」となります。

( エ )に関して、「線形抵抗特性」と「非線形抵抗特性」の違いを説明します。

線形抵抗特性とは、電流と電圧が比例関係になるという、オームの法則に則った一定の抵抗値をもつ性質のことをいいます。

一方、非線形抵抗特性とは、電流と電圧が比例関係になく、オームの法則に従わないような抵抗の性質のことを指します。より具体的には、酸化亜鉛素子を使った避雷器は、電圧が小さいときには電流がほとんど流れず、電圧が一定値を超えたところで一気に電流が流れるような仕組みになっています。

これによって、避雷器は通常時には絶縁体として振る舞い、雷による異常電圧が生じたときには導体として振る舞います。よって、( エ )には「非線形」が入ります。

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