電験三種 H28年 機械 問3 問題と解説

 問 題     

次の文章は、三相誘導電動機の誘導起電力に関する記述である。

三相誘導電動機で固定子巻線に電流が流れると( ア )が生じ、これが回転子巻線を切るので回転子巻線に起電力が誘導され、この起電力によって回転子巻線に電流が流れることでトルクが生じる。この回転子巻線の電流によって生じる起磁力を( イ )ように固定子巻線に電流が流れる。

回転子が停止しているときは、固定子巻線に流れる電流によって生じる( ア )は、固定子巻線を切るのと同じ速さで回転子巻線を切る。

このことは原理的に変圧器と同じであり、固定子巻線は変圧器の( ウ )巻線に相当し、回転子巻線は( エ )巻線に相当する。回転子巻線の各相には変圧器と同様に( エ )誘導起電力を生じる。

回転子がn[min-1]の速度で回転しているときは、( ア )の速度をns[min-1]とすると、滑りsはで表される。このときの( エ )誘導起電力の大きさは、回転子が停止しているときの( オ )倍となる。

上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)、(エ)及び(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

    (ア)    (イ)    (ウ)  (エ)  (オ)

  1. 交番磁界  打ち消す   二次  一次  1-s
  2. 回転磁界  打ち消す   一次  二次  1/s
  3. 回転磁界  増加させる  一次  二次  s
  4. 交番磁界  増加させる  二次  一次  1/s
  5. 回転磁界  打ち消す   一次  二次  s

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説    

三相誘導電動機は、回転磁界を作る固定子と、回転する回転子から構成されます。

固定子の励起電流による同期速度(回転磁界の速度)と、回転子との速度の差(=相対速度)によって回転子に電圧が発生し、その電圧によって回転子に電流が流れる、というのが誘導機の原理です。そのため、( ア )には「回転磁界」を入れるのが適切です。

( イ )には「打ち消す」または「増加させる」が入りますが、誘導電動機の原理が電磁誘導を利用したものであることを考えると、ここには「打ち消す」を入れるのが正しいと判断できます。

( ウ )と( エ )について、誘導電動機の等価回路は以下のように描くことができ、問題文にもあるように、これは変圧器と同じ原理なので、その等価回路も同様となっています。

このとき、一次側が固定子巻線、二次側が回転子巻線に対応するので、( ウ )には「一次」が、( エ )には「二次」が入ります。

( オ )について、解説の最初のほうで説明した通り、誘導起電力は同期速度と回転子の速度との差(=相対速度)によって生じます。

この誘導起電力の大きさは、同期速度nsに対する同期速度nsと回転速度nとの差に比例しますが、これは滑りsそのものを指しています。よって、滑りsは次のように表すことができます。

  • s:滑り
  • ns:同期速度
  • n:回転速度

ここで話を( オ )に戻すと、回転子が動いているときの二次誘導起電力Vと、回転子が止まっているときの二次誘導起電力V0との比は、次のように計算することができます。

よって、( オ )には「s」を入れるのが正しいとわかります。

以上から、

  1. 回転磁界
  2. 打ち消す
  3. 一次
  4. 二次
  5. s

となるので、正解は(5)です。

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