電験三種 H28年 機械 問2 問題と解説

 問 題     

次の文章は、直流機に関する記述である。

直流機では固定子と回転子の間で直流電力と機械動力の変換が行われる。この変換を担う機構の一種にブラシと整流子とがあり、これらを用いた直流機では通常、界磁巻線に直流の界磁電流を流し、( ア )を回転子とする。

このブラシと整流子を用いる直流機では、電機子反作用への対策として補償巻線や補極が設けられる。

ブラシと整流子を用いる場合には、補極や補償巻線を設けないと、電機子反作用によって、固定子から見た( イ )中性軸の位置が変化するために、これに合わせてブラシを移動しない限りブラシと整流子片との間に( ウ )が生じて整流子片を損傷するおそれがある。

なお、小形機では、補償巻線と補極のうち( エ )が一般的に用いられる。

上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)及び(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

   (ア)    (イ)   (ウ)   (エ)

  1. 界磁   電気的   火花  補償巻線
  2. 界磁   幾何学的  応力  補極
  3. 電機子  電気的   火花  補極
  4. 電機子  電気的   火花  補償巻線
  5. 電機子  幾何学的  応力  補償巻線

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説    

以下の図は、直流発電機の構造を示す一例です。

直流機は、固定子と回転子で構成されます。それぞれ名前の通り、動かないで固定している部品と、回転する部品ということになりますが、固定子には界磁や継鉄などがあり、回転子には電機子や整流子などがあります。よって、( ア )には「電機子」が入ります。

続いて、幾何学的中性軸と電気的中性軸についてですが、幾何学的中性軸とは、上図の赤点線で示した軸のことで、整流子のちょうど中心を通る、物理的な中心線となります。一方、電気的中性軸は、正電荷と負電荷が釣り合っていて、その名の通り電気的に中性となっている軸のことを指します。

たとえば無負荷時であれば、界磁のちょうど真ん中の軸が電気的中性軸となるので、この場合は幾何学的中性軸と重なります。しかし、電機子が回転しているときは、電機子反作用が発生するので、電気的中性軸の位置も変わります。よって、( イ )には「電気的」が入ります。

( ウ )は選択肢(1)~(5)のいずれを見てもわかるように、( イ )と連動しています(つまり、ここについては考えなくても大丈夫です)。( イ )で「電気的」を選んだ場合は、電気的中性軸が変化したことにより、ブラシと整流子の間に短絡電流が流れ、火花が生じるおそれがあります。

一方、( イ )で「幾何学的」を選んだ場合は、物理的な位置ずれによって応力が生じると考えるのが妥当です。上記の通り、( イ )には「電気的」が入るので、( ウ )として正しいのは「火花」になります。

ここまでの話から、電機子反作用への対策としては、ブラシの位置と電気的中性軸とのずれを抑制することが望ましいのですが、その方法として主流なのが以下の2つです。

  • 補極を設けてギャップの磁束分布の偏りを補正する方法
  • 補償巻線を使って電機子電流と反対向きの電流を流し、磁束を打ち消す方法

どちらも電機子反作用対策として有効ですが、補償巻線は高価であるため、一般的には補極が使われることが多いです。よって、( エ )には「補極」が入ります。

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