問 題
次の文章は、誘導障害に関する記述である。
架空送電線路と通信線路とが長距離にわたって接近交差していると、通信線路に対して電圧が誘導され、通信設備やその取扱者に危害を及ぼすなどの障害が生じる場合がある。この障害を誘導障害といい、次の2種類がある。
- 架空送電線路の電圧によって、架空送電線路と通信線路間の( ア )を介して通信線路に誘導電圧を発生させる( イ )障害。
- 架空送電線路の電流によって、架空送電線路と通信線路間の( ウ )を介して通信線路に誘導電圧を発生させる( エ )障害。
架空送電線路が十分にねん架されていれば、通常は、架空送電線路の電圧や電流によって通信線路に現れる誘導電圧はほぼ0Vとなるが、架空送電線路で地絡事故が発生すると、電圧及び電流は不平衡になり、通信線路に誘導電圧が生じ、誘導障害が生じる場合がある。
例えば、一線地絡事故に伴う( エ )障害の場合、電源周波数をf、地絡電流の大きさをI、単位長さ当たりの架空送電線路と通信線路間の( ウ )をM、架空送電線路と通信線路との並行区間長をLとしたときに、通信線路に生じる誘導電圧の大きさは( オ )で与えられる。
誘導障害対策に当たっては、この誘導電圧の大きさを考慮して検討の要否を考える必要がある。
上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)、(エ)及び(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ)
- キャパシタンス 静電誘導 相互インダクタンス 電磁誘導 2πfMLI
- キャパシタンス 静電誘導 相互インダクタンス 電磁誘導 πfMLI
- キャパシタンス 電磁誘導 相互インダクタンス 静電誘導 πfMLI
- 相互インダクタンス 電磁誘導 キャパシタンス 静電誘導 2πfMLI
- 相互インダクタンス 静電誘導 キャパシタンス 電磁誘導 2πfMLI
解 説
誘導障害とは、電力線に近接した通信線や人に対して誘導電圧が発生してしまうことです。送電線の誘導障害には、「静電誘導障害」と「電磁誘導障害」があります。
まずは、静電誘導障害について。
送電線と通信線の間、通信線と大地の間にはそれぞれキャパシタンス(静電容量)がありますが、前者(送電線と通信線との間)の静電容量が大きいときには、通信線に電圧が生じ、通信障害や感電が起こります。この現象を、静電誘導障害といいます。
続いて、電磁誘導について。
これは送電線と通信線の間の相互インダクタンスによって生じる障害です。電力線を流れる電流によって通信線に電圧が生じ、通信障害などの悪影響を与えます。
よって、( ア )~( エ )は、順番に、「キャパシタンス」、「静電誘導」、「相互インダクタンス」、「電磁誘導」となります。
また、問題とは直接関係ありませんが、文中に出てくる「ねん架」というのは、送電線の配置箇所を区間ごとに入れ替えることです。そうすることで、各相のキャパシタンス(静電容量)やインダクタンスが等しくなり、電流や電圧の不均衡を防ぎ、誘導障害の軽減につながります。
( オ )について、まずMは単位長さあたりの相互インダクタンスなので、これに区間長Lを掛け合わせるとインダクタンスML[H]となります。インダクタンスに各周波数ωを掛けたものがリアクタンスであり、これに電流Iを掛けると電圧Vになるので、( オ )は以下の計算によって求められます。
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