この項では、架空送電線に使う電線の種類について解説します。
架空送電線には「鋼心アルミより線」、「鋼心耐熱アルミ合金より線」、「硬銅より線」の3つがありますが、主には鋼心アルミより線と鋼心耐熱アルミ合金より線を使います。
そもそも、より線とは単線をより合わせた電線のことを指します。これにより、電線が可とう性(曲げられる性質)を持つことができます。
鋼心アルミより線
鋼心アルミより線は、中心に鋼より線があり、その周囲に硬アルミ線をより合わせたような構造をしています。これは後述する硬銅より線に比べ、メリットが数多くあります。
まず、機械的な強度に優れています。これは鋼心によるものです。また、軽いことも特徴です。これはアルミ線によるものです。そして、コロナが発生しにくいという特徴もあります。これは、電線の外径が大きいために電線表面の電界強度が小さくなり、コロナ放電開始電圧が上がることが原因です。
一方、デメリットとしては、導電率の低さが挙げられます。具体的には、標準軟銅の導電率を基準(100%)とすると、鋼心アルミより線の導電率は60%前後となります。
また、大事なこととして、鋼心アルミより線は「多導体方式(複導体方式)」を取ります。多導体(複導体)とは、1相に対して複数の電線を用いるということです。こうすることでインダクタンスが下がり、静電容量は上がります。つまり、送電容量が上がり、安定度も増します。コロナも発生しにくくなります。
鋼心アルミより線の場合は、2~8条とするのが一般的です。
鋼心耐熱アルミ合金より線
鋼心耐熱アルミ合金より線は、鋼心アルミより線にジルコニウムを加えることで耐熱性を高めたものです。
硬銅より線
硬銅より線は硬銅線をより合わせたものですが、今はあまり使われません。というのも、上述のように鋼心アルミより線に劣る部分が多いからです。
ただし、標準軟銅の導電率を基準(100%)とすると、硬銅より線の導電率は97%前後という高い値を示します。
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