問 題
電源の電圧や周波数が一定の条件下、各種電動機では、始動電流を抑制するための種々の工夫がされている。
a.直流分巻電動機
電機子回路に( ア )抵抗を接続して電源電圧を加え始動電流を制限する。回転速度が上昇するに従って抵抗値を減少させる。
b.三相かご形誘導電動機
( イ )結線の一次巻線を( ウ )結線に接続を変えて電源電圧を加え始動電流を制限する。回転速度が上昇すると( イ )結線に戻す。
c.三相巻線形誘導電動機
( エ )回路に抵抗を接続して電源電圧を加え始動電流を制限する。回転速度が上昇するに従って抵抗値を減少させる。
d.三相同期電動機
無負荷で始動電動機(誘導電動機や直流電動機)を用いて同期速度付近まで加速する。次に、界磁を励磁して( オ )発電機として、三相電源との並列運転状態を実現する。そののち、始動用電動機の電源を遮断して同期電動機として運転する。
上記の記述中の空白箇所(ア)~(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- ア イ ウ エ オ
- 直列 Δ Y 二次 同期
- 並列 Y Δ 一次 誘導
- 直列 Y Δ 二次 誘導
- 並列 Y Δ 一次 同期
- 直列 Δ Y 二次 誘導
解 説
aの文章について、直流分巻電動機の回路図は下図の通りです。
- I:外部電源電流 [A]
- Ia:電機子電流 [A]
- If:界磁電流 [A]
- V:端子電圧(外部電源電圧) [V]
- E:逆起電力 [V]
- Ra:電機子巻線の抵抗 [Ω]
- Rf:界磁巻線の抵抗 [Ω]
上図において、始動前は電機子のところの逆起電力Eが0[V]なので、外部電源をつないだ瞬間に電機子に大きな電圧(=V[V])が掛かり、電機子電流Iaが大きな電流として流れてしまいます。
これを避けるには、電機子に直列に可変抵抗をつなぎます。そうすると、始動時には大きな抵抗値を持った可変抵抗によって電機子電流Iaを抑えることができ、回転速度が安定して逆起電力がきちんと出たら可変抵抗の抵抗値を小さくすることができます。
よって、( ア )には「直列」が入ります。
bの文章について、三相かご形誘導電動機では、Y-Δ始動という方法がよく用いられます。この方法は、まず最初に固定子巻線をY結線にして電源電圧を加えて加速し、続いて、回転子の回転速度が定格回転速度に近づいたら、そこで固定子巻線をΔ結線に切り替えるという方法です。
つまり、始動時はY結線、通常運転時はΔ結線にコイルの接続を切り替えるというやり方です。こうすることで、最初からΔ結線のまま始動してしまう場合と比較して、始動電流も始動トルクも3分の1倍になります。
始動トルクが下がることはデメリットといえますが、始動電流が下がるメリットが大きいので、これは有用な始動方法です。
よって、問題文の文章を読むと始動時には( ウ )結線、安定時には( イ )結線という並びなので、( イ )に「Δ」が入り、( ウ )に「Y」が入ります。
cの文章について、三相巻線形誘導電動機は二次回路を調整することができるので、それを利用して始動します(かご形だと二次回路を調整できないので、bの文章のように一次回路を調整することになります)。
この方法は、二次回路をスリップリングで引き出して抵抗を接続し、二次抵抗値を定格運転時よりも大きな値に調整します。このとき、トルクの比例推移特性を利用して、トルクが最大となる滑りを1付近になるように調整することで、始動電流を小さく、そして、始動トルクを大きくすることが実現できます。
よって、( エ )には「二次」が入ります。
dの文章について、三相同期電動機の始動方法には自己始動法や始動電動機法などがありますが、この文章では始動電動機(誘導電動機や直流電動機)を使っているので、これは始動電動機法の説明文となります。
始動電動機法は、以下のような手順で同期電動機を始動させる方法です。
- 無負荷で始動電動機(誘導電動機や直流電動機)をつなぎ、これらを使って三相同期機を回転させます。
- 三相同期機の回転子が同期速度付近になったとき、同期機の界磁巻線を励磁します。この時点で、この同期機は同期発電機として振る舞います。
- 三相電源に接続して電源と同期発電機の並列運転状態を実現させたあと、始動用電動機の電源を遮断します。
- すると、回路内には三相電源と同期機だけになるので、同期機の役割が同期発電機から同期電動機に変わり、同期電動機として運転します。
よって、( オ )には「同期」が入ります。
以上から、( ア )は「直列」、( イ )は「Δ」、( ウ )は「Y」、( エ )は「二次」、( オ )は「同期」なので、正解は(1)です。
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