問 題
植物病害の防除に関する記述として最も妥当なのはどれか。
1.乾熱消毒は、種子を約 70 ℃ で 30 分程度処理し、病原体を死滅又は不活化させる方法である。種子の深部に侵入した病原を殺菌するため、種子水分含量を高めて実施する。
2.土壌伝染病の防除には、圃場の衛生管理が重要であり、罹病植物の残渣の圃場内での埋設処理や焼却処理が効果的である。また、土壌くん蒸では、防除効果を高めるため、ガスが抜けないうちに植付けを行う。
3.コムギの連作を続けると徐々にコムギ立枯病の発病が軽減することが知られている。この現象は発病衰退現象と呼ばれ、生物的防除として位置づけられている。
4.ハクサイは、稚苗期に根こぶ病への感受性が高いため、作期を早めて稚苗期に高温に遭遇させる。こうした対応は物理的防除の一つとして位置づけられている。
5.化学的防除は、製剤化された拮抗微生物や有機合成農薬を用いる防除方法である。拮抗微生物は、宿主の抵抗性を誘導するが、病原菌を死滅させることはない。
解 説
選択肢 1 ですが
乾燥消毒は種子の種類により異なります。また、ダイズの乾燥消毒法の一例は「40℃ で 1 日予備乾燥して水分量を減らして調節 → 70℃ 12 時間乾燥」です。70 ℃ 30 分程度ではありません (イネの種子に対する温湯浸法 との混同を狙った記述と思われます)。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
前半部分について、作物残渣から土壌に菌等が移動するため、処分は圃場外でおこなうべきと考えられます。また後半部分について、土壌くん蒸後は、有毒なガスのガス抜きをしてから植付けします。「ガスが抜けないうちに植付け」ではありません。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 は妥当です。
発病衰退現象についての記述です。
選択肢 4 ですが
根こぶ病は代表的な土壌伝染病です。病原体は土壌中で生存しており、作期を早めるという対応は妥当ではないと考えられます。酸性土壌で発病が激しくなるので石灰施用により発病をある程度抑制できます。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 ですが
製剤化された拮抗微生物を用いるのは生物学的防除です。選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 3 です。

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