公務員試験 H30年 国家一般職(農学) No.24 解説

 問 題     

被子植物の生殖と遺伝の仕組みに関する記述として最も妥当なのはどれか。

1.自家受精は、同じ花の花粉と卵細胞で受精が起こる場合をいい、同じ個体であっても別の花との間で受精が起こる場合を他家受精という。アスパラガスやナシは雌雄異株である。

2.果樹の育種は、一般に、品種や系統間の交雑で得られた実生から優良個体を選抜する系統育種法により行われる。また、得られた優良個体を増殖するため、遺伝形質を固定する必要がある。

3.減数分裂の際に、相同染色体間に乗換え (交さ) が起こり、遺伝子の組換えが生じることがある。この組換えの頻度により、連鎖した遺伝子間の染色体上の距離を推定できる。また、連鎖している遺伝子の発現はメンデルの独立の法則には当てはまらない。

4.ある形質の発現に対し、 2 組の遺伝子 AB が互いに補足し合う補足遺伝子では、AAbb と aaBB を交雑すると、F1 では全てaabb と同じ表現型となり、F2 では 13: 3 で分離する。

5.真核生物では、DNA 上の遺伝情報は DNA ポリメラーゼによって転写され、mRNA ができる。この mRNA の塩基配列に基づき、ゴルジ体でタンパク質が作られる。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説     

選択肢 1 ですが
自家受精は「同一個体に生じた雄性配偶子 (花粉) と 雌性配偶子 (卵細胞) の間で受精すること」です。自家受精の中でも「同じ花」の花粉と卵細胞 間の受精は「同花受粉」といいます。

他家受精は「別の個体間での受精」です。「同じ個体であっても別の花との間で受精が起こる場合」ではありません。選択肢 1 は誤りです。


選択肢 2 ですが
「交雑で・・・優良個体を選抜する」のは「個体選抜法」と考えられます。選択肢 2 は誤りです。

系統育種法は、交雑で遺伝的変異に富む基本集団を育成した後に、F2 世代から選抜を開始し、体系的に選抜を行なう方法です。個体レベルの選抜ではなく、集団レベルの選抜といえます。イネ、麦など自家受精作物 (自殖性) の品種改良に多く利用されている手法です。有名なイネ品種 コシヒカリ が系統育種法で作られた代表例です。

ちなみに、固定度が高まる F6 〜 F8 世代になってから選抜を行なうのが集団育種法です。林木育種を進める上での基本となる育種法です。


選択肢 3 は妥当です。
減数分裂における乗り換え、遺伝子の組み換えについての記述です。


選択肢 4 ですが
補足遺伝子は、2 つの遺伝子の効果があってはじめて優性の表現型が現れるような相互作用です。AAbb からできる配偶子は Ab、aaBB からできる配偶子は aB なので、F1 は全て AaBb です。A と B が揃ったので、優性の表現型が現れます。「F1 では全て aabb と同じ表現型」ではありません。ちなみに、F2 では 9:7 となります。選択肢 4 は誤りです。


選択肢 5 ですが
DNA から RNA を転写する際に働く酵素は、RNA ポリメラーゼです。DNA ポリメラーゼは DNA の複製時に働く酵素です。

また、タンパク質が作られるのは「リボソーム」です。そして、リボソームで作られたタンパク質は小胞体を通りゴルジ体に輸送されて糖鎖修飾等を受けます。選択肢 5 は誤りです。


以上より、正解は 3 です。

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