問 題
イネの品種や栽培生理、栽培管理に関する記述として最も妥当なのはどれか。
1.イネは、北日本など寒冷地では、栄養成長期間を確保するために感温性が高い品種、西日本では、秋冷による登熟障害を回避するために感光性が高い品種を中心に栽培されている。
2.イネの移植直前に実施する作業を代かきといい、プラウを用いて行う。代かき作業終了直後に移植作業を行うことによって、移植精度が高まる。
3.我が国でのイネの栽植密度は、機械移植の場合、条間、株間共に50 cm 程度である。また、1 株当たりの植付け本数は、10 本程度が適当とされている。
4.イネは、生殖成長転換までの栄養成長期間の長さが品種によって異なり、その後の生殖成長期間については品種間差は小さい。栄養成長期間が短いものから順に早生、中生、晩生品種に区分される。
5.イネの倒伏は、挫折型、なびき(湾曲)型、ころび型の三つがあり、なびき型倒伏は直播栽培に特有である。倒伏の発生は、栽培管理や気象条件などによって左右され、品種間差はみられない。
解 説
選択肢 1 ですが
「栄養成長期間を確保するために」と「秋冷による登熟障害を回避するために」が逆です。選択肢 1 は誤りです。
北日本など寒冷地は 1 年の大半が寒いので、ある程度栄養成長したらさっさと穂をつけてくれないと、寒さによる登熟障害のおそれがあります。そのため、感温性が高い、感光性が小さい品種が適します。
寒冷地で「感光性が大きい品種」を栽培すると、日長が短くなってからしか幼穂形成期に入りません。すると、穂が出るころに秋冷の時期となり、登熟障害の可能性が高くなります。
一方、西日本などの暖地では、暖かいので不十分な栄養成長段階で穂が出てしまいがちです。つまり「穂が出る前の栄養成長期間を十分に確保すること」が肝要です。そのため、寒冷地とは逆に 感温性は低く、感光性が高い品種が適しています。
選択肢 2 ですが
プラウは耕起で用いる機械です。耕起 → 水を貼る → 代かき という流れです。代かきは水を貼ってからトラクター等で行います。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが
栽植は、苗を田んぼに植えることです。栽植密度は「単位面積当たり 植付け株数」×「1 株当たり苗数」です。植付け株の栽植密度は条間 30 cm、株間 15 〜 18 cmが一般的です(条間、株間のイメージは下図参照)。また、1 株当たり苗数は 3 〜 5 本/株 が適当とされます。

「条間、株間共に 50 cm 程度」「10 本程度が適当」ではないと考えられます。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 は妥当です。
早生 (わせ)、中生 (なかて)、晩生 (おくて) についての記述です。
選択肢 5 ですが
栽培管理や気象条件が同じであっても、品種によって倒伏が発生するかしないかに違いはあります。「倒伏の発生は、… 品種間差はみられない」わけではありません。選択肢 5 は誤りです。
ちなみに、直播栽培でおきやすいのが ころび型倒伏です。ころび型倒伏は、節間や節には異常がないが、根張りが不十分であるため、株全体が棒倒しのように倒れる倒伏です。
以上より、正解は 4 です。

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