問 題
江戸時代の国学や蘭学に関する記述として最も妥当なのはどれか。
1.本居宣長は,万葉集に表現された素朴で素直な心を「もののあはれ」と呼び,古代人に人間の理想を見いだして古典文学の研究を進め,国学の祖と呼ばれた。
2.平田篤胤は,荻生徂徠の提唱した古文辞学に基づく復古神道を唱えたが,幕末期には蘭学が流行していたため社会への影響力を持つことができなかった。
3.第6 代将軍徳川家宣の時代に,長崎における漢訳洋書の輸入制限が緩和されると,新井白石,青木昆陽らはオランダ語を学び,蘭学の先駆者となった。
4.前野良沢や杉田玄白らは,オランダ語の解剖学書を『解体新書』として訳述した。また,杉田玄白は,その経緯を『蘭学事始』という書物に書き残した。
5.渡辺崋山や高野長英は,蘭学の合理的な批判精神を学ぶ中で,庶民の困窮に対して無策の幕府の支配体制を批判したため,安政の大獄で処罰された。
解 説
選択肢 1 ですが
本居宣長は、『古事記』などの古典を実証的に研究し『古事記伝』などを著しました。(H27no40)。 また、『源氏物語 玉の小櫛』を著し、源氏物語が 「もののあはれ」を表現した最高の物語と考えました。もののあはれ とは、折に触れ、目に見、耳に聞くものごとに触発されて生じる、しみじみとした情趣や無常観的な哀愁です。「万葉集に表現された素朴で素直な心」ではありません。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
平田篤胤は、儒教や仏教を強く排斥し、日本古来の純粋な信仰を尊ぶ「復古神道」を大成しました。復古神道は尊王攘夷運動に影響を与えました。「幕末期に・・・社会への影響力を持つことができなかった」わけではありません。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが
漢訳洋書の輸入制限緩和は、実学を重んじた 第 8 代将軍徳川吉宗の時代です。6代家宣ではありません。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 は妥当です。
蘭学に関する記述です。
選択肢 5 ですが
渡辺崋山、高野長英らが処罰されたのは「蛮社の獄」です。安政の大獄で処罰されたのは、井伊直弼の反対派だった吉田松陰、橋本左内らです。選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 4 です。
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