問 題
我が国の障害者の就労支援に関する記述として最も妥当なのはどれか。
1.障害者雇用促進法*1において,「障害者」とは,身体障害,知的障害,精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害があるため,長期にわたり,職業生活に相当の制限を受け,又は職業生活を営むことが著しく困難な者と定義され,事業主は,労働者の募集及び採用について,障害者に対して,障害者でない者と均等な機会を与えなければならないとされている。
2.障害者雇用率制度とは,民間企業等に対し,一定の割合(法定雇用率)以上の障害者の雇用を義務付けるものである。民間企業の法定雇用率については,制度創設当初,国及び地方公共団体の法定雇用率よりも低率とされていたが,平成25 年に同率とされた。『平成29 年版障害者白書』によれば,平成28 年6 月1 日現在,法定雇用率を達成した民間企業*2 は7 割を超えた。
3.職場適応訓練事業は,障害者雇用促進法において,事業主が障害者を3 か月間試行的に雇用し,障害者が職場に適応するための訓練を行うものとされており,訓練終了後に当該障害者を雇用することは前提とされていない。訓練期間中は,事業主と障害者の間で有期雇用契約が結ばれ,障害者には賃金が支給される。
4.就労移行支援事業は,障害者総合支援法*3において,企業等での就労経験はあるものの現在は雇用関係のない障害者などに対して,事業所内において雇用契約に基づく就労の機会を提供するものとされており,事業主は,最低賃金を保障しなければならない。同事業は利用期間の設定がなく,一般企業への就労移行に向けた支援が行われる。
5.地域包括支援センターは,職業能力開発促進法において,主に身体障害者や知的障害者に対し,就職に必要な知識・技能の習得を目的として職業訓練を行う施設とされている。同センターにおける訓練期間は設定されておらず,公共職業安定所(ハローワーク)や地域障害者職業センターなどの関係機関との連携の下に訓練を実施するものとされている。
*1 正式には「障害者の雇用の促進等に関する法律」
*2 常用雇用労働者数が50 人以上の企業をいう。
*3 正式には「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」
解 説
選択肢 1 は妥当です。
障害者雇用促進法における障害者の定義です。
選択肢 2 ですが
本試験時点において、民間企業の方が低率です。また、法定雇用率を達成した民間企業が「7 割以上」は少し多いと感じるのではないでしょうか。 5 割弱です。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが
職場適応訓練は、実際の職場で作業について訓練を行い、作業環境に適応することを容易にさせる目的で実施するものです。訓練終了後は、その訓練を行った事業所に雇用してもらうことを期待して実施します。「訓練終了後に当該障害者を雇用することは前提とされていない」という記述は妥当ではありません。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 ですが
就労移行支援事業は、原則 24 ヶ月の期間利用できる、障害者総合支援法に定められた福祉サービスの1つです。働くために必要な知識や能力を高めることができます。サービス提供料金のうち、最高 1 割負担となります。「事業主が最低賃金を保障」する制度ではありません。また「利用期間の設定がなく」というわけでもありません。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 ですが
地域包括支援センターは、介護保険法で定められた、地域住民の保健・福祉・医療の向上、虐待防止、介護予防マネジメントなどを総合的に行う機関です。「職業能力開発促進法において」ではなく、また、「職業訓練を行う施設」ではありません。選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 1 です。
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