問 題
組織をめぐる人間関係に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。
1.M.ヴェーバーは,『支配の社会学』において,支配の三類型のうちの一つである「伝統的支配」の最も純粋な型として官僚制を位置付けた。彼は,近代社会では,官僚制は行政組織内においてのみ観察され,社会の他の領域では見られないと主張した。
2.C.I.バーナードは,『経営者の役割』において,個人を組織に従属させる機械的組織論を展開した。彼は,個々の組織が組織目標の達成と成員の動機の充足という二つの課題を同時に達成することは不可能であると主張した。
3.F.W.テイラーは,『科学的管理法』において,時間研究,動作研究に基づいて労働者の一日当たりの標準作業量を確定するという方法を考案した。生産能率の向上などを図るために考案されたこの方法は,自動車メーカーにおける工場管理にも影響を与えた。
4.G.リッツアは,『ディズニー化する社会』において,ディズニー社の社員に求められている行動様式が,多くの領域・地域で影響を与えていると主張した。彼は,ディズニー化を,現代社会の全生活過程において脱マニュアル化が進行していく過程であるとした。
5.P.ブラウは,論文「弱い紐帯の強さ」において,強い紐帯よりも弱い紐帯の方が,異なる集団間の情報伝播を容易にすると主張した。一方で,彼は,転職活動においては,弱い紐帯を用いたときよりも強い紐帯を用いたときの方が,転職者にとって満足度の高い転職となっていることを明らかにした。
解 説
選択肢 1 ですが
ヴェーバーは、支配を合法的支配,伝統的支配,カリスマ的支配の三つに分類し、合法的支配の最も純粋な形態が官僚制的支配であるとしました。(H29no57)。伝統的支配の最も純粋な型ではありません。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
バーナードは公式組織成立のための条件として、組織の 3 要素 = 共通目的、協働意志、コミュニケーションを示しました。(H29no46).それらのどれもが組織には一定水準必要とされています。組織目標の達成と、成員の動機の充足という2つの課題の同時達成が不可能と主張したわけではありません。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 は妥当です。
テイラーの科学的管理法に関する記述です。(H27no49)。
選択肢 4 ですが
「ディズニー化する社会」の著者は、アラン・ブライマンです。リッツアは「マクドナルド化する社会」の著者です。ディズニー化の特徴は、 「テーマ化」, 「ハイブリッド消費」, 「マーチャンダイジング」, 「パフォーマティブ労働」 の4つです。脱マニュアル化が進行していく過程というわけではありません。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 ですが
「弱い紐帯の強さ」の著者は、ブラウではなく、M.グラノヴェッターです。また、転職活動において、弱い紐帯を用いた方が満足度の高い転職になっていることを明らかにしました。選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 3 です。
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