公務員試験 H29年 国家専門職(食品衛生監視員) No.4毒性学Ⅰ(2)解説

 問 題     

重金属等に関する記述 ①~⑤ について,妥当なものには ○ を,妥当でないものには × をそれぞれ記せ。

① 無機ヒ素のヒト体内での主な代謝経路はメチル化であり,有機ヒ素に変換されることにより,毒性が増す。

② メタロチオネインを構成するアミノ酸の約1/3 はリシンである。アミノ基に親和性の高い重金属類は,このリシンによって捕捉され,有害作用発現能が低下する。

③ 鉛は,ヘムの生合成における δ ー アミノレブリン酸脱水酵素の機能を阻害し,尿中の δ ー アミノレブリン酸の濃度上昇を引き起こす。

④ 無機水銀化合物は,腸管からはほとんど吸収されず,経口的に摂取した場合の中毒症状は,腹痛,下痢,腎臓障害などである。

⑤ クロムの一般的な形態のうち,三価クロムは,国際がん研究機関(IARC)による評価では,グループ1「ヒトに対して発がん性がある」に分類されている。

 

 

 

 

 

 解 説     

① ですが
前半部分は妥当です。

後半部分ですが
有機ヒ素について、毒性が減るとされています。近年、ヒ素の有機化と毒性減少の関連性について、疑問も呈されている現状のようです。少なくとも「有機ヒ素に変換されることにより、毒性が「増す」」という記述は、誤りと考えられます。

② ですが
メタロチオネインを構成するアミノ酸の多くは「システイン」です。リシンではありません。

③、④は、妥当な記述です。

⑤ ですが
クロムについては、三価クロムと六価クロムがあり、六価クロムに発がん性の疑いがあります。そこでより安全性の高い三価クロムを使用する流れになっています。三価クロムはグループ1に分類されていません。本試験時において、グループ1に該当しているのは、六価クロムです。

以上より、①☓、②☓、③◯、④◯、⑤☓ です。

コメント

  1. 匿名 より:

    ①は毒性が減るの誤りではないでしょうか。

  2. kazupiko より:

    解説修正いたしました。

    調べてみたところ、少し古い他の資格試験の問題では毒性が減る という文章が正解となっていたのですが、近年の研究報告などが見つかったため、それをふまえたものに解説を修正しています。

    ご指摘ありがとうございます!