問 題
発達研究の方法に関する記述として最も妥当なのはどれか。
1.縦断的研究は,異なる年齢集団を対象とし,それぞれの年齢集団の特徴を明らかにして,各年齢間の発達的変化やその基礎にある発達のメカニズムを明らかにしていこうとするものである。縦断的研究の短所としては,実施に際して膨大な時間と費用がかかることが挙げられる。
2.縦断的研究には,個々のデータの一貫性や変化が具体的であり,因果関係の説明が容易になることが多いという長所がある。しかし,年齢のみが異なり,その他の環境や資質がほぼ等しい年齢群間を比較する必要があるため,実施に際してできるだけ等質で複数の年齢群を確保する必要がある。
3.横断的研究では,例えば,2001 年及び2004 年に,それぞれ3 歳児を調査するように,同一年齢の集団を,異なる時代に測定する。このように,同一又は近い年齢範囲や同学年に属し,出生や入学などのライフイベントを共有した集団のことをコーホート(cohort)という。
4.横断的研究は,縦断的研究に比べて時間がかからず,同時に多くの資料を得ることができるので効率が良い。ただし,調査対象者個人の所属する年齢集団の特徴が研究結果に影響するコーホート効果について留意する必要がある。
5.シャイエ(Schaie, K. W.)が提案した「最も効率的なデザイン」では,複数の出生コーホートを同時に追跡する。このデザインでは,調査の開始後に,追跡中に脱落した対象者を補完するために,同じ出生コーホートに属する新たな対象者を加えることは避けるべきとされている。
解 説
選択肢 1,2 ですが
縦断的研究とは、特定の対象について、過去や将来も含めた一定期間を含むデータをとる研究のことです。「異なる年齢集団を対象」にするわけではありません。また、「年齢のみが異なり、その他の環境や資質がほぼ等しい年齢群間を比較する必要がある」わけでもありません。よって、選択肢 1,2 は誤りです。
選択肢 3 ですが
横断的研究とは、ある一時点において、対象についてデータをとる研究のことです。「2001~2004年にそれぞれ3歳時を調査する」のは、横断的研究ではありません。コーホートについては妥当です。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 は妥当です。
横断的研究についての記述です。
選択肢 5 ですが
シャイエが提案した「系列法」は、複数の集団を縦断的に調査する、という「横断的研究と縦断的研究」を合わせた方法です。「最も効率的なデザイン」と呼ばれます。シャイエによるシアトル縦断研究が、系列法を用いた研究例です。このデザインにおいて、例えばある集団が 40 歳になった時に、40 歳の参加者を追加募集して調査するという手法がとられます。これにより、サバイバー効果(練習効果)を統制します。「新たな対象者を加えることは避けるべき」ではありません。選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 4 です。
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