問 題
薬物療法における向精神薬に関する記述として最も妥当なのはどれか。
1.抗うつ薬は,抑うつ気分,意欲低下,不眠等を主症状とするうつ状態を改善させる薬であり,三環系薬物,四環系薬物,SSR(I 選択的セロトニン再取り込み阻害薬)等の種類がある。これらは,いずれもノルアドレナリンやセロトニンといった,脳内のモノアミンの減弱作用があるとされている。
2.気分安定薬は,躁病の興奮を鎮める抗躁効果があり,カルバマゼピン,バルプロ酸等の種類がある。これらは双極性障害の躁状態の治療に用いられることが多いが,継続的に使用することで依存性が生じやすく,うつ状態を引き起こすため,多動・興奮の症状が鎮静されたら,速やかに減量し,投与を中止しなければならないとされている。
3.抗不安薬は,大脳辺縁系に作用して,不安や緊張等の情緒面の障害を選択的に改善し,また自律神経系の活動を安定させるとされている。パニック症や全般不安症における慢性化した不安に対する治療に使用されることが多いが,副作用として,長期使用に伴う依存性があるため,継続的な服薬を要するうつ病や強迫症の治療に使用されることはない。
4.抗精神病薬は,脳内の神経伝達物質であるドーパミンを遮断する作用によって,幻聴や妄想等の症状を軽快させ,病的な精神運動興奮を鎮静させる効果があるとされている。統合失調症の治療に使用されることが多いが,同疾患の陰性症状に対してはほとんど効果がなく,長期的な社会生活の改善のためには心理社会的支援を併用する必要があるとされている。
5.睡眠薬は,不眠障害のほか,各種精神障害に伴う不眠の改善を目標とする薬であり,ベンゾジアゼピン系化合物やバルビツール酸系化合物等がある。吸収や代謝,排泄等の薬物動態学的特徴によって複数の種類があり,いずれも不眠の症状に対しては効果があるものの,過眠の症状には効果がないとされている。
解 説
選択肢 1 ですが
SSRI は、選択的セロトニン再取り込み阻害剤です。神経同士の間隙であるシナプスにおける、神経伝達物質の一種であるセロトニンの再取り込みを阻害します。そうすることで、シナプスにおけるセロトニン濃度を高く保ちます。これがうつ症状の改善につながるというメカニズムです。このメカニズムから「・・・セロトニンといった、脳内のモノアミンの減弱作用」ではないと判断できるのではないでしょうか。選択肢 1 は誤りです。参考 H28no1
選択肢 2 ですが
気分安定薬とは、抗躁、抗うつの双方向性の作用を有する薬の総称です。カルバマゼピンやバルプロ酸などがあげられます。「うつ状態を引き起こす」わけではありません。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが
抗不安薬は、うつ病や強迫症の治療にも用いられます。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 は妥当です。
統合失調症における陽性症状に対して主に用いられるのが抗精神病薬です。
選択肢 5 ですが
睡眠薬の種類は「作用時間の違い」から、超短時間型、短時間型、中時間型、長時間型などに分類されます。「薬物動態学的特徴により複数の種類がある」というわけではありません。選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 4 です。
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