公務員試験 H29年 国家一般職(行政) No.56解説

 問 題     

家族に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.個人が生まれ,教育を受け,成長していく家族のことを定位家族といい,結婚して自らが形成していく家族を生殖家族という。一つの家族は,定位家族と生殖家族の二つの側面を同時に持ち得る。

2.ライフ・サイクルとは,人間の一生における結婚や子育てなどの出来事が規則的に変化する過程を意味する。今日では,全体の傾向として,個人の生涯史をたどるライフ・コースから,家族生活歴の標準モデルであるライフ・サイクルへと,研究の視点が移行してきている。

3.直系家族は,家族を類型化する概念の一つであり,結婚によって家族が生まれるが,その家族は一代で完結するという考え方である。したがって,世代を超えて存続する「家」の概念に注目した夫婦家族とは区別されている。

4.フランスの歴史家であるP.アリエスは,子供期という概念は生物学的な根拠を持っており,どの社会にも普遍的であることを明らかにした。そして彼は,近代家族を,親密性や情緒性といった家族感情を軽視しているとして批判した。

5.我が国では,近年,未婚化が進行している。平成22 年に実施された国勢調査によれば,男性,女性共に生涯未婚率は20 % を超えている。また,平成12 年,17 年,22 年のいずれの年も,女性の生涯未婚率は男性の生涯未婚率よりも高い。

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説     

選択肢 1 は妥当です。
定位家族と生殖家族についての記述です。

選択肢 2 ですが
ライフ・サイクルについての前半の記述は妥当です。後半部分ですが、今日では高齢化などが進み、一生の中で個人で過ごす時間や、個人を中心において生き方が浸透しています。そのため、家族の共通性よりも、各々の家族と個人の個別性に着目する必要性が高まっています。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
結婚により家族が生まれ、一代で完結するという考え方は「夫婦家族制」です。直系家族制とは、家の跡取りが家族を継いでいくという考え方です。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
アリエスは「<子供>の誕生」の著者です。タイトルからも読み取れるように「子ども期」という概念が普遍的ではなく、時代の中で生まれたものであるという主張です。「生物学的な根拠を持っており、どの社会にも普遍的」といった主張ではありません。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
生涯未婚率が高いのは「男性」です。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 1 です。

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