公務員試験 H28年 国家一般職(行政) No.55解説

 問 題     

開発や貧困問題に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.「アフリカ開発会議(TICAD)」は,米国が主導して,国連,国連開発計画,世界銀行及びアフリカ連合委員会と共同で開催される,アフリカ諸国の開発の支援をテーマとする国際会議である。我が国は,アフリカ大陸でのレアアースの確保の必要性が高まったことなどから 2013 年に初めて同会議に参加した。

2.A.センは,貧困を人間の基礎的な潜在能力である選択の幅や自由度が欠如している状態であると捉え,貧困削減とは個々人の潜在能力を高めていくことであるとした。「経済協力開発機構開発援助委員会(DAC)貧困削減ガイドライン」も,能力の欠如に着目し,貧困とは,経済的能力,人間的能力,政治的能力,社会・文化的能力,保護能力が欠如している状態であるとした。

3.「人間の安全保障」という概念は,1984 年に国連安全保障理事会における「人間開発報告」の中で公に取り上げられた。同報告は,人間の安全保障を,飢餓・疾病・抑圧等の恒常的な脅威からの安全の確保と日常生活から突然断絶されることからの保護の二点を含む包括的な概念であるとし,開発を進めるに当たり個々人の生命と尊厳を重視することが重要であると指摘した。

4.グラミン銀行は,バングラデシュ政府により設立され,バングラデシュの農村において大地主を対象として,低金利で大規模な融資を行っている。融資を基に農業の近代化が図られ,農業経営による収益が拡大した結果,土地を所有せず農業に従事していた貧困層の生活の向上や農村女性の地位の向上等の成果もみられるようになった。

5.「国連ミレニアム開発目標(MDGs)」においては,2015 年までに達成すべきものとして,初等教育の完全普及の達成,乳幼児死亡率の削減等の教育及び保健分野に限定した目標が設定された。「国連ミレニアム開発目標」とはされなかった極度の貧困と飢餓の撲滅については,2016 年から 2030 年までの目標である「持続可能な開発のための 2030 アジェンダ(SDGs)」に含められることとなった。

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説     

選択肢 1 ですが
アフリカ開発会議は、日本政府が国際連合・国際連合開発計画・アフリカ連合委員会・世界銀行との共催で開催する国際会議です。1993 年、細川内閣の下で第1回が開催されました。「2013 年に初めて同会議に参加」ではありません。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 は妥当です。
アジア初ノーベル経済学賞受賞者 A.セン の「潜在能力」についての記述です。

選択肢 3 ですが
1994 年「国際連合開発計画」の人間開発報告で「人間の安全保障」という言葉が登場しました。「1984年」「国連安全保障理事会」ではありません。また、人間の安全保障とは、「人間の生にとってかけがえのない中枢部分を守り、すべての人の自由と可能性を実現すること」と定義されています。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
グラミン銀行は、ムハマド・ユヌスが 1983 年に創設した、マイクロクレジットと呼ばれる、貧困層を対象にした比較的低金利の無担保融資を行う銀行です。「政府により設立」ではありません。また、「大地主を対象」ではありません。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
ミレニアム開発目標において、2015 年までに達成すべきものとして「8 つ」の目標を掲げました。その中には極度の貧困と飢餓の撲滅、環境の持続可能性確保なども含まれます。「教育及び保健分野に限定した目標」というわけではありません。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 2 です。

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