問 題
企業の戦略に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。
1.1950〜60 年代の米国企業の多角化パターンについて,H.I.アンゾフは,専門比率や関連比率などの指標を用いて,類型化を行い,関連比率が 0.7 以上をコングロマリットに分類した。当時の米国では,機関投資家などによる合併・買収が減少する一方で,財閥の急成長により,コングロマリット的多角化が進んだとされている。
2.コスト・リーダーシップ戦略の成功には,規模の経済性,顧客価値の向上,模倣困難な差異性が必要であるとされる。このうち,模倣困難な差異性とは,原材料や部品などを安価に調達し大量生産を実現することで,顧客の便益が相対的に向上することに加え,できる限り早く市場に参入して,有利な立地や特許を取得することで先発の優位を生じさせることである。
3.後発の優位とは,後発企業が他社よりも遅い時期に投資を行うことで得られる正の超過利潤のことである。後発の優位が生じるのは,先発企業が開拓した市場にただ乗りできる場合や,市場や技術の不確実性が低下している場合などであり,前者の場合においては,後発企業は,市場の開拓に必要な宣伝費用やインフラ整備費用を抑制できる。
4.バリューチェーンとは,製品企画・開発,原材料の調達,生産,在庫,輸送,受発注業務など一連の供給連鎖プロセスのことである。また,自社の製品を市場に供給するバリューチェーンに沿って他企業を取り込んで事業活動領域を拡大することを水平結合といい,市場シェアの拡大を目指して自社と同様の事業活動を営む競合他社を吸収合併することを垂直統合という。
5.市場における競争に影響を与え,収益性を左右する要因には,新規参入者の脅威,競合他社の敵対度,代替品の脅威,供給業者の交渉力,購買者の交渉力の五つがある。このうち,新規参入者の脅威,代替品の脅威,購買者の交渉力の三つについては,その程度が大きいほど,業界における企業の収益性は高くなるが,競合他社の敵対度,供給業者の交渉力の二つについては,その程度が小さいほど,当該収益性は高くなる。
解 説
選択肢 1 ですが
アンゾフは、企業の多角化戦略を、新市場が既存領域と同じか違うか、新製品や新サービスが技術と関連性があるかないかの程度に注目して分類しました。代表的な戦略が、『水平型多角化』、『垂直型多角化』、『集中型多角化』、『コングロマリット型』です。この中で、コングロマリット型とは、新市場は既存と異なり、かつ、技術の関連性も小さいタイプです。「関連比率が 0.7 以上」ではないと考えられます。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
コストリーダーシップは、低価格で商品やサービスを提供する、あるいは原価を抑えて利益率を増大させることで、優位性を確立する戦略のことです。(H27no46)。模倣困難性が必要というわけではありません。
選択肢 3 は妥当です。
後発の優位についての記述です。(H27no46)。
選択肢 4 ですが
前半は「サプライチェーン」についての記述です。バリューチェーンとは、企業活動の各工程を「付加価値の質・量」に注目したプロセス、及び、プロセスの見方です。後半ですが、水平結合はバリューチェーンにおける特定の工程に関する、複数企業の一体化です。垂直統合は、バリューチェーンに沿って、付加価値の源泉となる工程を取り組むことです。製品生産だけでなく、原料製造や(上流)、販売チャネル(下流)まで取り込むというイメージです。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 ですが
新規参入者の脅威が大きかったり、代替品の脅威が大きいと、業界における企業の収益性は「低く」なると考えられます。選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 3 です。
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