公務員試験 H27年 国家一般職(農学) No.23解説

 問 題     

ゲノム情報の育種利用に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1. イネではゲノム情報を利用したQTL 解析などによって早晩性を支配する遺伝子群が単離されている。実際の育種でもこれらの遺伝子の一つをコシヒカリに導入し食味など優良形質はほぼコシヒカリのままで出穂期のみを変更した準同質遺伝子系統が育成されている。

2. DNA マーカーの多くは優性遺伝子のみを検出するので分離集団内でホモ型とヘテロ型の区別はできない。一方DNA マーカーを用いることにより作物の生育段階に応じたゲノムDNA の塩基配列の変化を検出することができる。

3. イネでは基準品種「日本海」の全ゲノム塩基配列が解読されている。また Mu トランスポゾンを利用した遺伝子破壊系統コレクションやゲノム全体の網羅的な遺伝子発現解析に用いるマイクロRNA などゲノム情報の利用に欠かせないツールが充実している。

4. 表現型と遺伝子型の対応関係を明らかにする手法のうち、集団遺伝学的手法はゲノム配列情報から対象遺伝子の生物的機能を特定する手法であり、逆遺伝学的手法は既存の自然変異や突然変異にみられる形質の表現型の違いから原因遺伝子を特定する手法である。

5. 自殖性作物では同一品種の個体間で全てのDNA 遺伝子型が均一となっている。近年はDNA 多型解析の精度が向上しており1種類のDNA マーカーを用いるだけで品種判別することが一般的となっている。

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説     

選択肢 1 は妥当な記述です。
「QTL : Quantitative trait locus (量的形質遺伝子座)」 とは、「量的形質(どれくらい収量があるか など)に影響を与える DNA 上の領域のこと です。いっぱいあります。

選択肢 2 ですが
DNAマーカーによって、特定の遺伝子を含む染色体のある領域が、親から子へ受け継がれたかどうか検定できます。ホモ型とヘテロ型の区別もできます。よって、選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
全ゲノム塩基が解読された基準品種といえば、日本「晴」です。また、内在性トランスポゾン「Tos17」を用いた遺伝子破壊系統コレクションなどが知られています。よって、選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
形質→遺伝子 という着目の流れが遺伝学で、遺伝子→形質 という流れが逆遺伝学です。主語が逆です。よって、選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
試験時点において、一般的には品種判別に複数のDNAマーカーを用いることが一般的であると考えられます。よって、選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 1 です。

コメント