公務員試験 H27年 国家一般職(教養) No.38解説

 問 題     

我が国の地方自治に関する記述として最も妥当なのはどれか。

  1. 憲法では地方自治の基本原則として「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は地方自治の本旨に基いて法律でこれを定める」と規定されている。この地方自治の本旨には、住民自治と団体自治の二つの側面があり、そのうち団体自治とは、地方公共団体の政治が地域住民の意思に基づいて行われることをいう。
  2. 地方公共団体は、地方議会の議決に基づき法律の範囲内で条例を制定することが認められている。したがって法律で規定されていない項目を条例に追加する、いわゆる上乗せ条例や、法律の規定より厳しい規制を行ういわゆる横出し条例は、法律の趣旨を逸脱し国民の権利を著しく制約するおそれがあるため禁止されている。
  3. 地方自治法では、議会の解散請求や議会議員・首長の解職請求(リコール)など住民による直接請求権が規定されている。その一つである条例の制定・改廃請求(イニシアティブ)は、地方公共団体の住民の3分の1の署名によって首長に対して行うことができるとされている。
  4. 平成11年に成立したいわゆる地方分権一括法に基づき三位一体の改革が進められたことで,地方交付税に充てられていたたばこ税などは地方税に移譲された。これにより地方公共団体は、その歳出の8割を自主財源で賄うことができるようになり地方公共団体の独自性が高められた。
  5. 地方自治への住民参加については、一つの地方公共団体のみに適用される特別法の制定に関して憲法で保障されている住民投票(レファレンダム)のほか、地域の重要な政策決定について条例に基づいて住民の意思を問う住民投票などがある。

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説     

選択肢 1 ですが、記述は「住民自治」についてです。「団体自治」とは、団体内部での問題を、地方自治体自らの解決に委ねている、という事です。よって、選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが、憲法 94 条によれば、地方公共団体は法律の範囲内で条例制定できます。横出しや上乗せも禁止されているわけではありません。また、そもそも「上乗せ条例」と「横出し条例」の内容が逆です。よって、選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが、条例の制定・改廃請求(イニシアティブ)は、「有権者総数の 1/50」が必要です。1/3 ではありません。よって、選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが、地方税は歳出 の 3 割程度です。又、たばこ税は地方税に移譲されていません。細かい数値等は不要ですが、財源確保による独自性向上はなおも地方における大きな課題点であるという点はイメージできるようにしておくとよいです。

選択肢 5 は、妥当な記述です。

以上より、正解は 5 です。

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