問 題
動機づけに関する次の記述のうち、妥当なのはどれか。
1. 科学的管理法の提唱者 F.W.テイラーは、科学的な標準設定に基づく「自発性と誘因」の管理法の採用を主張した。テイラーは工場労働者が自発性を発揮できると信じており、労働者自らが課業を設定する差別出来高給制度によって自発性を最大限に引き出せると考えた。この点から科学的管理法は、達成動機づけの理論の源流と位置付けられる。
2. 人間関係論が誕生する舞台となったホーソン実験では、工場の物理的作業条件が従業員の貢献意欲 (モラール) に最大の影響を与え、その結果として生産性が決定されるという因果関係が発見された。その後、V.H.ブルームによって、作業条件に関する職務満足度と生産性の間には強い正の相関関係があることが検証された。
3. 有能さと自己決定の感覚を経験したいという内発的動機づけは二つの一般的行動を導く。一つは、自分が有能で自己決定的であることを感じさせてくれるような機会、つまり自分にとって適度なチャレンジを提供するような状況を追求するような行動である。もう一つは、自分が出会ったり、創り出したりしているチャレンジを征服しようとするような行動である。
4. 動機づけ衛生理論は、職務満足及び職務不満足の規定因を明らかにした外発的動機づけの系統の理論である。満足要因は達成、承認、仕事そのものなどであり、満足感の持続性に対して短期的な影響力しか持たなかったことから衛生要因と名付けられた。不満足要因は会社の方針と管理,監督、給与などで、長期的な影響力を持つことから動機づけ要因と名付けられた。
5. 人間の行動特性に対する考え方はX理論とY理論に分類される。人間は生来仕事が嫌いだと仮定するX理論の管理原則は、目標設定の権限を従業員に委譲することで組織目的との統合を目指すべきとする統合の原則となる。人間が仕事をするのは遊びと同じく自然なことだと仮定するY理論の管理原則は、伝統的な命令、統制によって従業員の意欲を引き出す階層原則である。
解 説
選択肢 1 ですが
テイラーは、怠業における「組織的怠業」に注目しました。そして、組織的怠業は、適切な標準設定と報酬設定により克服できると考えました。(H26no47)。そして、テイラーが提唱した「差別出来高制度」は、標準的な仕事(課業)を達成した者には割り増し賃金を、そうでない者には定額賃金(最低賃金)のみを支払うというシステムです。「労働者自らが課業を設定する」わけではありません。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
G. E. メーヨーらはホーソン工場で行われたいわゆる「ホーソン実験」において、作業能率・生産性は物理的環境条件や作業方法と一義的に結び付くものではなく、人間関係、監督の在り方、作業者個々人の労働意欲などと密接な関係があることを明らかにしました。「工場の物理的作業条件が・・・最大の影響を与え」るわけではありません。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 は妥当です。
内発的動機づけについての記述です。
選択肢 4 ですが
F.ハーズバーグは、動機づけ衛生理論を提唱しました。これは、職場満足と職場不満は同一の要因ではなく、動機づけ要因が職場満足と関連し、衛生要因が職場不満と関連する、という理論です。(H26no47)。「満足要因」は「動機づけ要因」、「不満足要因」は「衛生要因」と対応します。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 ですが
マクレガーによる X 理論と Y 理論についての記述です。管理原則が逆です。X 要素が強い場合、言わなきゃ仕事しないため、命令・統制が管理原則です。Y 要素が強い場合、従業員の望みと組織目的の統合を目指すのが管理原則となります。選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 3 です。
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