公務員試験 H27年 国家一般職(行政) No.28解説

 問 題     

契約の解除に関する次の記述のうち、妥当なのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。

1. 他人の所有する不動産を目的とする売買契約が締結され、売買契約時に売主と買主のいずれも売買の目的物が他人の不動産であることを知らなかった場合において、売主がその不動産の所有権を取得して買主に移転することができないとき、売主は、損害を賠償して、売買契約の解除をすることができる。

2. 贈与者が受贈者に対し贈与者の所有する建物を贈与する代わりに受贈者が贈与者を扶養するという負担付贈与契約が締結された場合において、受贈者が負担を履行しないときであっても、贈与者は負担付贈与契約の解除をすることはできない。

3. 賃借人が、賃貸人の承諾を得ずに、賃借物を第三者に転貸した場合、賃借人がその第三者に賃借物を使用又は収益をさせる前であっても、賃貸人は、賃借人との間の賃貸借契約の解除をすることができる。

4. 建物の建築を目的とする請負契約において、その仕事の目的物である建物に瑕疵があり、そのために契約をした目的を達成することができない場合は、注文者は請負契約の解除をすることができる。

5. 委任契約が、委任者の利益のみならず受任者の利益のためになされた場合には、委任者は、受任者が著しく不誠実な行動に出る等やむを得ない事由があるときに限り、委任契約を解除することができる。

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説     

民法改正に伴う、契約の解除についてのポイント
1:解除要件から、債務者帰責性 削除
2:催告解除の要件 明確化
3:無催告解除の要件 整理 となります。

選択肢 1 は妥当な記述です。
民法第 565 条です。

選択肢 2 ですが
負担付贈与について、民法第 553 条により、双務契約に関する規定が準用されます。そして、判例によれば、受贈者が負担を履行しない場合、民法第 541,542 条を準用し、契約解除できると解すべき とされています。「贈与者は・・・解除をすることはできない」わけではありません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
民法第 612 条第 2 項によれば、「賃借人が・・・第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。」とあります。従って、「使用又は収益をさせる前」であれば、契約解除はできません。選択肢 3 は誤りです。

改正民法による削除項目が対応!選択肢 4 ですが
本試験時点において、改正前民法第 635 条により、建物その他の土地の工作物については、解除ができないという規定でした。民法改正により、635 条は削除されました。そして、債務不履行による契約の解除の一般的な規律に従うこととされました(改正民法第 559,564 条)。従って、本試験時点の法、及び判例に従った場合に、選択肢 4 は誤りです。注意しておきましょう!

選択肢 5 ですが
民法第 651 条により、委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができます。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 1 です。

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