問 題
債権の消滅事由に関するア~オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。
ア. 不法行為に基づく損害賠償債権を受働債権として相殺をすることは許されないが、不法行為に基づく損害賠償債権を自働債権とし、不法行為に基づく損害賠償債権以外の債権を受働債権として相殺をすることは許される。
イ. 相殺は、当事者の一方から相手方に対する意思表示によって行われ、その効果は、当該意思表示が相手方に到達した時から生じ、相殺適状の時に遡らない。
ウ. 不動産所有権の譲渡による代物弁済の効果として債権の消滅という効果が生じるためには、単に所有権移転の意思表示をするのみで足り、所有権移転登記手続を完了することは必要ない。
エ. 代物弁済として給付した物に瑕疵があった場合には、瑕疵のない物の引渡請求をすることができるため、売主の瑕疵担保責任に関する規定が準用されることはない。
オ. 債権者が弁済の受領を拒んでいる場合、債務者は、供託所との間で供託契約を締結して弁済の目的物を供託することができる。その後、債権者が受益の意思表示をして供託物還付請求権を取得することにより、債務者は債務を免れることができる。
1. ア
2. イ
3. ア、オ
4. イ、エ
5. ウ、オ
解 説
記述 ア は妥当です。
不法行為による損害賠償請求権について、被害者側から相殺を主張することは許される、ということです。(民法 509 条 及び判例。)。
記述 イ ですが
相殺の効果は、相殺適状の時に遡ります。民法第 506 条 2 項です。「相殺適状の時に遡らない」わけではありません。記述 イ は誤りです。
記述 ウ ですが
判例(最判 S 40.4.30) によれば、代物が不動産所有権の場合、登記が弁済効力発生に必要です。「単に所有権移転の意思表示をするのみで足り」るわけではありません。記述 ウ は誤りです。
改正ポイントあり!記述 エ ですが
代物弁済は、有償契約のひとつです。従って、民法第 559 条により、規定が準用されます。※民法改正に伴い「瑕疵担保責任」→「売主の契約不適合責任」が準用されます。記述 エ は誤りです。
記述 オ ですが
債権者が弁済受領を拒んでいるから、債務者は債務を免れたいのに、債務消滅を進行させることができない、という状況です。このような状況の解決策の一つが、供託です。供託により債権は消滅します。(民法第 494 条)。結果として、債務を免れることができます。「その後、債権者が受益の意思表示をして・・・債務者は債務を免れることができる」わけではありません。記述 オ は誤りです。
以上より、正解は 1 です。
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