公務員試験 H26年 法務省専門職員 No.24解説

 問 題     

パーソナリティ理論に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1. クレッチマー (Kretschmer, E.) は、躁うつ病患者、統合失調症患者、てんかん患者それぞれに多く見られる体型があることと、彼らの病前性格と近親者たちの体格及び性格に一定の特徴があることとを見いだした。そして、それらの特徴についてそのまま健常者に適用することはできないが、体型によって罹患しやすい精神障害を予測することは可能であると考えた。

2. ウィニコット (Winnicott, D. W.) は、個々のパーソナリティの独自性と統合性を強調し、「生の様式」を提唱して、下から上へ、負から正へ、劣等感から優越感への追求の力の存在を仮定した。そして、この力は一貫して目標へと向かうが、その目標は劣等感の補償や優越感の追求のための虚構のものではなく、具体的な実在のものであることが重要だと主張した。

3. ユング (Jung, C. G.) は、外的存在物を基準に判断し行動する態度が習性化している人と、主観的認識を基準として判断し行動する態度が習性化している人とがいることを見いだした。そし
て前者は迎合的で気さくな態度を特徴とする一方、後者は引っ込み思案で、受け身の姿勢で周囲
を疑い深く観察するような傾向を示すとした。

4. ローゼンツァイク (Rosenzweig, S.) は、人間の行動は内面的な欲求と環境からの圧力との相
互作用によって決定されると考えた。そして、欲求は不満な状況を変えるために知覚や行動をあ
る特定の方向に体制化する力であり、圧力は行動を抑制するものであるとし、投影法検査の一つ
である P-F スタディを開発した。

5. フロイト (Freud, S.) は、発達の各段階におけるリビドーの充足のされ方や防衛的な発散の仕
方が、成人になった後の性格にも影響を及ぼすとした。そして、親との関係において、排泄のし
つけが厳しすぎた場合には依存傾向の強い性格となり、親からの養育拒否や罰を受けることへの
不安が解消されていないと、几帳面や頑固、あるいは強迫的な性格になるとした。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説     

選択肢 1 ですが
クレッチマーは、精神患者の体格と気質、病前性格に関連があるとし、3つの類型(肥満型:躁うつ気質、細長型:分裂気質、筋骨型:粘着気質)に分類しました。そして、体格と気質、性格の関連が健常者にも見られると考えました。「そのまま健常者に適用できない」と考えてはいません。よって、選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
個々のパーソナリティの独自性、統合性を強調、優越性の追求について言及 といった点から、アドラー心理学についての記述と考えられます。ウィニコット児童精神分析家で、母子関係に注目し、乳幼児が愛着を寄せるようになる無生物の対象を移行対象と呼びました。移行対象は、母の象徴的代理として機能すると考えました。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 は妥当な記述です。
ユングの類型論(タイプ論)です。基本態度2つと、4つの心的機能の組み合わせにより、8タイプの類型を考えました。

選択肢 4 ですが
ローゼンツァイク PーF スタディを開発した というつながりは妥当です。記述にある「欲求ー圧力理論」を提唱したのは マレー(Murray,H.A) です。また、マレーの欲求ー圧力理論に基づいた検査は TAT (Thematic Apperception test:主題統覚検査)です。P-F スタディは、欲求不満が喚起される場面などのイラストと空白の吹き出しによるテストです。TAT は、さまざまな受け取り方のできる場面の絵を見て、自由に物語るという方法でおこぬテストです。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
フロイトは、性的エネルギーであるリビドーの充足を満たす性感帯から発達をとらえ、それぞれの段階でリビドーが十分満たされなかったり、過剰に満たされた場合、その段階に心理的固着が起きて、その段階への退行、不適応につながると考えました。肛門期においてしつけが厳しすぎると、他の面でも厳しく、頑固、けち、几帳面といった性格になるとされます。「依存傾向の強い性格」ではありません。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 3 です。

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