公務員試験 H26年 国家一般職(行政) No.50解説

 問 題     

生産管理、品質管理に関する次の記述のうち、妥当なのはどれか。

1. 米国で 20 世紀初頭に誕生した総合品質経営 (TQM) は、連合国軍総司令部 (GHQ) によって日本へ伝えられたが、日本では全員参加型の全社的品質管理 (TQC) として普及、発展していくことになった。その後、日本企業は品質作り込みと作業内全数検査を重視して、統計的手法を作業現場で活用する検査システムを米国流の TQM に組み込んだので、1990 年代以降、日本企業の TQC は統計的品質管理 (SQC) と呼ばれることになる。

2. トヨタ生産方式でジャスト・イン・タイムを実現するための重要なシステムが、カンバンとアンドンである。カンバンは生産ライン脇の通路上に設置される電光掲示板で、各工程のその日の累積計画台数と累積実績台数を表示することで、生産計画の進捗管理に用いられる。アンドンは部品箱に貼られたカードで、各部品の納入指示票と生産指示票として機能することで、後補充の在庫システムが可能になる。

3. 自動車メーカーなどの工場では、工場内の全ての作業工程を担当可能な多能工と呼ばれるベテラン作業員が育成される。欧米では1970年代末までの時期に、生産性の向上と、生産量の変動に対する労働力のフレキシビリティの確保を目的として多能工化が完了したが、日本では20世紀前半に、従業員満足の観点から職務充実運動が展開されて多能工化が進められた。

4. 顧客からの注文を受けてから生産を開始し、指定された期日に納入する生産方法を注文生産という。注文生産では、メーカーの生産期間と顧客が発注してから入手するまでの納入期間とが物流期間の長短によらず、常に完全に一致する。このためメーカーは、工程内在庫となる仕掛品を持つ必要がなくなり、在庫コストはゼロになる。また、累積生産量と累積納品量の差である受注残をゼロにすることで、需要の変動に対応することが容易となる。

5. 工場内における生産工程の流れに応じて機械設備や作業員の配置方法は異なる。機能別レイアウトでは、同じ機能を持つ機械設備が一つの工程内にまとめて配置され、仕掛品が工程間を交錯して移動する。製品別レイアウトでは、製品の種類ごとに、作業の進む順序に従って機械設備が並べられて生産ラインを形成し、仕掛品がライン上を一方向的に移動する。

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説     

選択肢 1 ですが
GHQ により、まず 品質管理(QC)の考えがもたらされました。その後、1950 年にデミング博士が来日し、抜き取り検査法などに代表される「統計的品質管理(SQC)」が伝えられます。これが日本流に独自の進化をとげ、総合品質経営(TQM)へと発展していきました。「GHQ によって、TQM が伝えられた」わけではありません。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
アンドンは、生産ラインにおいて異常を知らせる電光表示板です。カンバンは、部品箱に貼られたカードです。前工程において仕掛けカンバン、後工程において引取カンバンを部品箱につけます。「カンバンは・・・電光掲示板」、「アンドンは・・・カード」ではありません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
「多能工」は、一人で「複数の」工程を遂行できる作業員です。「工場内の全て」が担当可能ではありません。また、一般的に欧米は単能工、日本は多能工といわれてきています。「欧米では 1970 年代末までの時機に・・・多能工化が完了」という記述は明らかに妥当ではありません。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
物流期間が長いときを考えます。注文を受けて生産開始→完成→「物流における輸送期間」が長くなります。そのため、「顧客が発注してから納入するまでの納入期間」=「メーカーの生産期間+十分長く、0 とはみなせない輸送期間」となります。生産期間と納入期間が常に一致するわけではないと考えられます。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 は妥当です。
工場レイアウトについての記述です。

以上より、正解は 5 です。

コメント