問 題
組織行動に関する次の記述のうち、妥当なのはどれか。
1. L.J.サベージのミニマックス・リグレット原理は、代表的な不確実性下の意思決定原理の一つである。ミニマックス・リグレット原理における決定の方法は、まず対戦相手の各戦略に対する自身の戦略について、最良の戦略と他の戦略との利得の差であるリグレットを求める。次に、自身の各戦略のリグレットの中から最大値をその戦略の保証水準とした上で、最小の保証水準をもたらす戦略を選択するというものである。
2. 現実の人間が発揮することのできる合理性は、環境の複雑性に対して著しく限定されているという意味で限定合理性である。この限定合理性しか持たない人間モデルを「経済人」といい、経済人は高度に特定化され、明確に定義された状況の中でしか意思決定を行うことができない。つまり、経済人は、直面する意思決定に関係する要素だけを抜き出して組み立てた、いわば「仮想空間」の中で意思決定を行う。
3. 近代組織論の創始者といわれるC.I.バーナードは、公式組織の成立条件、存続条件について明らかにした。このうち成立条件は、組織の有効性と組織の能率の二つから成る。組織の有効性とは、組織の目的の達成の程度のことであり、組織の能率とは、組織の成果が規格、仕様などの必要事項から乖離している割合のことで、歩留まりと呼ばれることもある。
4. 素朴な意思決定論には馴染まない、現実の意思決定状況を説明するための分析枠組みであるゴミ箱モデルは、いわゆる生産性のジレンマを最も重要な前提としている。生産性のジレンマとは,①利用可能な全ての代替案のうち2ないし3の代替案しか考慮しない、②各代替案が導く諸結果についての知識は不完全で部分的である、③起こりうる結果に対する効用序列は不完全であるという三つの特徴を持つ組織状態である。
5. 経営管理論の始祖 H.ファヨールは、資金流出入状況に基づいて自社の事業を評価し、事業・子会社の資産管理を行うことが経営することそのものであると考え、これを管理的職能と名付けた。管理的職能は予測、組織、命令、資本調達、統計の 5 要素から成るが、これらには順序があり繰り返される性質を持つので、ファヨールは PDS 又は PDCA と呼ばれる管理サイクルを提案し、その教育の必要性を説いた。
解 説
選択肢 1 は妥当です。
ミニマックス・リグレット原理による意思決定の例を以下にあげます。以下のようにリグレットを全ての場合に対して求めます。
その後は、自分の戦略ごとにリグレットを評価し、リグレットの最大値=その戦略の保証水準とします。以下の例では、戦略1の保証水準は 3、戦略2の保証水準は3、戦略3の保証水準は5です。従って、戦略1 or 2 を選ぶのが、後悔を最小化するような合理的意思決定となります。
選択肢 2 ですが
「経済人」は、「常に物質的・経済的欲望を最大限に満足させるよう行動する存在」というモデルです。「限定合理性しか持たない人間モデル」はサイモンが提唱した「経営人」モデルです。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが
組織の能率とは「個人の動機が満たされた度合い」を示します。有効性と能率が同時に達成されてはじめて組織が存続すると、近代組織論は考えました。ちなみに歩留まり(ぶどまり)は「1ー不良品割合」のことです。例として、100 の原料から、50 の良品が生産される場合、歩留まりは 0.5 です。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 ですが
「生産性のジレンマ」とは、技術向上により生産性が高まると、技術革新が生まれにくくなることです。後半は、限定合理性についての記述です。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 ですが
経営管理論の始祖ファヨールの唱えた管理的職能は、書籍等により表現に少しぶれがあるのですが、一例として「計画、組織、命令、調整、統制」です。明らかに「統計」は誤りです。PDCA サイクルは主に日本で用いられる生産品質の継続的改善手法です。選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 1 です。
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