公務員試験 H26年 国家一般職(行政) No.47解説

 問 題     

動機づけに関する次の記述のうち妥当なのはどれか。

1. 外的報酬が内発的動機づけに及ぼす影響力を、E.L.デシは統制的側面と情報的側面の二つに分けて定式化した。統制的側面は内発的動機づけを強化する影響力であり、成果主義のようにパフォーマンスと連動した報酬支払いをすると、認知された因果律の所在が外部から内部へ移される。一方、情報的側面は外発的動機づけを強化する影響力であり、活動の目的を有能さと自己決定の感覚を感じることから外的報酬の獲得にすり替える効果を持つ。

2. 動機づけ衛生理論の提唱者 F.ハーズバーグは、広範な先行研究のサーベイを通じて、動機づけ要因と衛生要因を見いだした。動機づけ要因は、職務満足と職務遂行の関係を規定する要因であり、具体的には給与、対人関係、作業条件が挙げられ、従業員が職務にとどまる程度に仕事をする確率しか説明することができないとした。一方で、衛生要因は、職務満足と生産性の向上の関係を規定する要因であり、達成、承認、仕事そのものなどが該当するとした。

3. J.W.アトキンソンは、達成動機に関する D.C.マクレランドとの共同研究の成果を基に、達成動機づけの理論を構築した。アトキンソンの理論では、達成行動の頻度や持続性は、個人のパーソナリティ要因としての達成動機の強弱のみによって決定されるのではなく、個人が直面する達成状況における期待及び達成がもたらす価値によって影響を受けるとされた。

4. F.W.テイラーは科学的管理法によって、工員が故意に仕事をゆっくりと行う怠業と呼ばれる現象の解消を試みた。怠業は性質によって二つに分類され、賃金システムに起因する組織的怠業は、科学的管理法では克服できないが、楽をしたがるという人間の本能に起因する自然的怠業は,科学的な標準設定によって克服することができるとした。

5. 期待理論の代表的研究者 E.E.ローラーは、外的報酬と内的報酬が動機づけに及ぼす影響力を詳細に検討した。外的報酬は成果と密接な関連を持つので、年功制のようなシステムの下では成果と満足感が正の相関を示すことになり、動機づけのレベルに対する説明力は高くなる。しかし内的報酬は、成果と密接な関連を持たないため、成果と満足感の相関関係そのものが安定しない。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説     

選択肢 1 ですが
E.L.デシは、レッパーと共に行った実験の結果から、「外的報酬が、内発的動機づけを低下させることがある」という考えを提唱しました。これをアンダーマイニング効果といいます。外的報酬において統制的側面があると、アンダーマイニング効果が見られると考えられています。「統制的側面は内発的動機づけを強化する」わけではありません。ちなみにですが、デシは、内発的動機づけ向上の鍵として「自律性、有能感、関係性」という3つを指摘しました。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
F.ハーズバーグは、動機づけ衛生理論を提唱しました。これは、職場満足と職場不満は同一の要因ではなく、動機づけ要因が職場満足と関連し、衛生要因が職場不満と関連する、という理論です。一文目は妥当ですが、二文目移行が妥当ではありません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 は妥当です。
アトキンソンの達成動機づけの理論についての記述です。

選択肢 4 ですが
テイラーは、怠業における「組織的怠業」に注目しました。そして、組織的怠業は、適切な標準設定と報酬設定により克服できると考えました。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
期待理論とは、モチベーション=期待 × 報酬の主観的価値 と考える理論です。外的報酬も内的報酬も、人や状況が違うと主観的価値が変化し、報酬に対する満足度も異なります。「外的報酬→満足感と正の相関、内的報酬→満足感との相関関係が安定しない」という関係ではありません。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 3 です。

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