公務員試験 H26年 国家一般職(行政) No.10解説

 問 題     

公務における統計や情報の取扱いに関する次の記述のうち、妥当なのはどれか。

1. 国の統計には、行政機関が行う統計調査を基に作成される「調査統計」と行政機関の届出等の業務データを基に作成される「業務統計」があり、両者とも公表する際には閣議決定を経ることとされている。「調査統計」のうち特に重要な国勢統計、世論調査統計、労働力統計等は「基幹統計」とされ、統計を作成する前提となる国勢調査、世論調査、労働力調査等の調査対象者には調査に回答する義務が課されている。

2. 平成25年に「個人情報の保護に関する法律」が改正され、行政機関等が、特定の個人を識別できる番号(いわゆるマイナンバー)を使って異なる分野に属する情報を照合し、これらが同一人物に係るものであるかどうかを確認できるようになった。これにより、行政運営の効率化等が図られる一方、個人のプライバシーが侵害されるおそれが生じたため、個人情報の取扱いに係る報告や資料提供を求める権限等を有する「特定個人情報保護委員会」が各府省に設置された。

3. A.ダンサイアの3人1組論によれば、3人1組の中間者は、上からの情報を選別し分解し翻訳する責務と、下からの情報を選別し集約し翻訳する責務を有し、この責務を幾重にも連鎖させているのが官僚制組織の作動様式とされる。このため、中間者が裁量を不当に停止又は濫用すれば下降方向の情報の流れを停滞させて上命下服関係が機能不全に陥り、中間者が上申を不当に停止又は濫用すれば上昇方向の情報の流れを停滞させて下意上達関係が機能不全に陥るとされる。

4. 我が国の安全保障に関する情報のうち特に秘匿する必要があるものについて、その漏えいの防止を図り、もって我が国及び国民の安全の確保に資することを目的として、平成25年の臨時国会において、「特定秘密の保護に関する法律」が成立した。これにより、特定秘密を取り扱う職員の適性を評価する仕組みは定められたが、同法において特定秘密の指定や提供、漏えいに係る罰則等のルールは定められなかったため、国家公務員法が改正され、守秘義務違反に対する罰則が強化された。

5. 「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」において、情報開示請求の対象となる情報は、国の行政機関及び地方公共団体が保有する情報とされ、国会と裁判所が保有する情報は対象外とされている。また、同法において、情報開示を請求することができる者は、日本国籍を有する者に限られており、さらに、地方公共団体に対して請求ができるのは、その地方公共団体の住民に限られている。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説     

選択肢 1 ですが
統計の公表に「閣議決定」は必要ではありません。また、「世論調査統計」が「基幹統計」といえるほど重要ではないと推測できるのではないでしょうか。この2点のどちらかで誤りと判断したい選択肢です。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
特定個人情報保護委員会は、内閣府の外局として設置されました。「各府省に」ではありません。各府省にだったとすると、十数個も設置されることになり、それはおかしいのではないかと考えたい所です。ちなみにその後、2016 年 に「個人情報保護委員会」に改組されました。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 は妥当です。
ダンサイアの 3 人 1 組論です。

選択肢 4 ですが
いわゆる特定秘密保護法案についての記述です。前半部分は妥当です。後半部分ですが、罰則等が無いと、目的の達成が難しく、法制定の意味がないと考えられるのではないでしょうか。この法は、国家公務員法等が規定する守秘義務を前提とし、「特定秘密」という類型を設け、漏えいに対する最高刑を懲役1年から大幅に引き上げたものです。「罰則等のルールは定められなかった」というわけではありません。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
対象機関は、行政機関に限られます。地方公共団体は含まれず、また、国会・裁判所も含まれません。開示請求は何人でも OK です。(外国人とかもOK)。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 3 です。

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