公務員試験 H25年 国家専門職(教養) No.29解説

 問 題     

知的財産権をめぐる最近の動向に関する記述として最も妥当なのはどれか。

  1. 2009 年に「偽造品の取引の防止に関する協定」が発効し、模造品などの国際的な拡散防止の基盤を確立するための世界的な枠組みがつくられた。近年、日本文化や日本食の模造品が海外に出回っていることから、我が国はこの条約をもとに、「クール・ジャパン戦略」を推進し、海外向けに、アニメやファッションの日本ブランドの登録制度や寿司などの日本食認定制度などをつくった。
  2. 2010 年の COP10 で採択された名古屋議定書において、発展途上国の権利として、マラリアやエイズなど生命に重篤な危機を与える疾病に関する医薬品の特許を保留させることができる規定が盛り込まれた。しかしながら、特許を保留して製造された医薬品が、我が国に個人輸入などのかたちで持ち込まれる事例が多発したため、これら医薬品を医薬部外品に指定し、輸入と使用の禁止措置を採っている。
  3. 2011 年に特許法が改正され、従業員が職務として行った発明が退職後に社外に持ち出され、国内外の他の企業などに流出することを防止するため、当該従業員の退職時に、発明にかかる特許の所属を企業とした上で、退職金のかたちで従業員に発明の相当の対価を企業が支払うことが規定された。その「相当の対価」は、特許庁の審判官の審査によるが、当事者間に不服があるときは、知的財産高等裁判所で審判を行うこととなっている。
  4. 意匠権及び実用新案権は、EU 諸国を中心に検討され、マーストリヒト条約によって、概念を確立して導入された知的財産権であり、我が国と欧米諸国以外ではあまり認知されていない。そのため、商品のデザインやマークなどで類似のものが出回っていて、我が国や欧米諸国からアジア諸国への製品の輸出の障害の一つとなっており、2012 年、ユネスコ本部に、知的財産権問題に関する検討部会が立ち上げられ、アジア地域については京都に地域事務所が設置された。
  5. 2012 年に著作権法が改正され、私的使用の目的の場合であっても、有償著作物等の著作権等を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、自らその事実を知りながら行うことにより著作権等を侵害した者に刑事罰が科されることとなった。また、暗号方式の保護手段の回避により可能となったDVD 等の複製を、その事実を知りながら行う場合には民事上違法となるとされた。

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説     

選択肢 1 ですが、「偽造品の取引の防止に関する協定」の「発効」は現時点で、まだです。よって、選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが、これは医薬品アクセス問題に関する「ドーハ特別宣言」についての記述です。COP10は、生物多様性条約第10回締約国会議です。遺伝子組換え生物の輸出入により生物多様性に損害を与えたときの”責任と救済”に関する合意などが、難しい交渉の中、議定書が採択された会議です。よって、選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが、相当の対価は、特許庁審判官の審査によるわけではありません。また、当事者間に不服がある場合、知財高裁で審判を行うというわけでもありません。よって、選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが、意匠権については、1711年フランスのリヨンの執政官が発した命令に始まるとされています。我が国における意匠の保護は、明治21年(1888年)の意匠条例に始まりました。認知も多くの国・地域でされています。また、実用新案制度も認知されている国・地域は数多く、特に中国の伸びが著しい現状です。よって、選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 は、妥当な記述です。

以上より、正解は 5 です。

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