問 題
突然変異の育種利用に関する記述として最も妥当なのはどれか。
1. 「ミルキークイーン」は、「ササニシキ」のα-アミラーゼ遺伝子をコードする wx 座に突然変異が生じたものである。この変異によりデンプンが高アミロース化し米飯が柔らかく粘りがあり冷めても硬くなりにくいといった優れた特徴が付与された。
2. 突然変異を誘発する方法のうち 59Co を線源とした γ 線の照射は、突然変異誘発には有効だが植物中の原子が放射化するため利用する際は注意が必要である。中性子照射は照射された植物中の原子が放射化することはない上に、透過力が高い点が優れているため我が国における突然変異育種によく用いられている。
3. sd1 遺伝子を持つイネの半矮性はエチレン合成系の酵素が欠損する突然変異により生じ、uzu 遺伝子を持つコムギの半矮性はジベレリン情報伝達抑制因子の変異により生じる。半矮性オオムギは、アブシシン酸合成系の酵素遺伝子 Rht1 の欠損変異を有している。
4. 種子繁殖性作物のうち他殖性作物は、劣性変異がホモ接合になりにくく、自殖性作物より突然変異育種が難しい。倍数性作物のうち異質倍数体は、一つの遺伝子に突然変異が生じても、他の同祖遺伝子が機能を補うため変異形質が表れにくく2倍体の作物より突然変異育種が難しい。
5. タンパク質などの組成変化や早生化、あるいは毒性成分の含量低減化などを引き起こす突然変異は、優性変異であることが多い。一方酵素遺伝子の1塩基置換により生じる除草剤耐性などは、機能欠失型の劣性変異であることが多い。
解 説
選択肢 1 ですが
ミルキークイーンは「コシヒカリ」をベースとした品種です。「ササニシキ」ではありません。また、デンプンが「低」アミロース化したものです。よって、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
59Co は、天然の安定同位体です。線源としては 60Co が用いられます。よって、選択肢 2 は誤りです。また、植物中の原子が放射化するのは、中性子照射です。
選択肢 3 ですが
uzu はオオムギ、Rht1 はコムギの半矮性遺伝子です。また、sd1,Rht1 が共にジベレリン生合成系の酵素の遺伝子です。よって、選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 は、妥当な記述です。
選択肢 5 ですが
優性と劣性が逆と考えられます。よって、選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 4 です。
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