公務員試験 2020 (R2) 年 国家一般職(農学) No.31 解説

 問 題     

耕地土壌の特徴に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1.シルトは、粘土よりも粒子が小さく、マイナス電荷を表面にもち、養分を蓄えることができる。粘土、砂土、腐植などが混ざり団粒化した土壌は、保水力はあるが、排水性が悪い。

2.我が国の水田土壌は、灰色低地土が最も多く、次いで黒ボク土が多い。また、畑土壌では、グライ土が約半分を占めており、作土層は表面数cm の酸化層とその下の還元層に分かれている。

3.還元状態にある水田土壌では、畑土壌に比べて、リンが可給化されやすく、脱窒現象が起こりにくい。老朽化水田では、一酸化二窒素(亜酸化窒素)の発生によりイネの根に被害を与える。

4.畑土壌では、雨水の地下浸透によりマグネシウムイオンやカリウムイオンが水素イオンやアルミニウムイオンに置き換えられ土壌が酸性化する。酸性土壌ではリン酸の肥効が低下しやすい。

5.施設土壌では、必要量だけ灌水・施肥されることから、塩類集積による障害を受けにくいが、塩類が集積した場合には、灌水量を増やして栽培を行う。これは連作障害を回避する効果もある。

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説     

選択肢 1 ですが
土壌中の鉱物は粒子の大きさにより、大きい方から「礫 (れき)、砂 (さらに粗砂、細砂、微砂 (シルト  )  )、粘土」に分類されます。2mm → 0.002mm 以下 ぐらいのスケールです。粘土の方がシルトよりも粒子が小さいです。「シルトは、粘土よりも粒子が小さ」いわけではありません。選択肢 1 は誤りです。


選択肢 2 ですが
我が国の国土を覆っている代表的土壌は、1:黒ボク土 (約 30% ぐらい、畑の 50% ぐらい、腐植多く、比重比較的小)、2:褐色森林土 (約 30%)、3:低地土 (約 15% 、灰色低地土とグライ低地土で 水田の 約70%)  です。※「グライ」は グレーから来ており、青灰色や緑灰色の土層を指します。土壌中の鉄分が還元されてこのような色になります。

畑土壌の 約半分を占めるのが「黒ボク土」です。選択肢 2 は誤りです。


選択肢 3 ですが
土壌中に存在する窒素化合物が窒素ガスに還元されて空中に放散する現象が脱窒です。 水田でとくに問題となります。「還元状態にある水田土壌では、・・・脱窒現象が起こりにくい」わけではありません。ちなみに、畑土壌では流亡が主で脱窒は少ないです。選択肢 3 は誤りです。


選択肢 4 は妥当です。
畑土壌の特徴についての記述です。


選択肢 5 ですが
施設土壌(ビニルハウスやガラス温室など施設内で栽培する際の土壌) では 雨による流出が少なく、また、土壌中の肥料成分や水分が上方向へ移動するため、土壌表面に肥料成分が多く集まります。このため、塩類集積が「起こりやすい」です。「施設土壌では、・・・塩類集積による障害を受けにくい」わけではありません。選択肢 5 は誤りです。


以上より、正解は 4 です。

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