公務員試験 2019 (R1) 年 国家一般職 (農学) No.30 解説

 問 題     

殺虫剤と抵抗性に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1.ネオニコチノイドと呼ばれる化合物は、昆虫の神経軸索の電位依存性ナトリウムチャネルに作用して神経伝達を撹かく乱する。カメムシ目昆虫における抵抗性の発達が指摘されている。

2.殺虫剤の解毒酵素として知られているカルボキシルエステラーゼ (CE) は、有機リン化合物を酸化する。一般に、哺乳動物の CE 活性は昆虫より低いとされている。

3.Bt 芽胞中に形成される結晶性毒素タンパク質は、昆虫に非選択的に作用することで知られている。投与された昆虫はホルモンバランスを崩し、正常な脱皮、変態が進行しなくなる。

4.キチン合成阻害剤は、IGR (昆虫成長制御物質) の一つとして知られている。IGR は、脊椎動物には存在しない昆虫に特有の作用点に働くため、脊椎動物に対する急性毒性は低い。

5.殺虫剤への抵抗性発達の要因は、殺虫剤の昆虫体内への浸透性の向上や、作用点の構造変化による感受性の低下などである。一般に、昆虫の中でも 1 年に多くの世代を重ねる種では抵抗性発達例が少ない。

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説     

選択肢 1 ですが
ネオニコチノイド系は「ニコチン受容体アゴニスト」です。作用するのはシナプス後膜のニコチン受容体です。神経軸索のナトリウムチャネルではありません。選択肢 1 は誤りです。


選択肢 2 ですが
カルボキシルエステラーゼは、有機リン化合物を「加水分解」します。酸化するわけではありません。選択肢 2 は誤りです。


選択肢 3 ですが
BT(Bacillus thuringiensis:バチルス・チューリンゲンシス)剤は、天敵細菌による殺虫剤です。天敵なので対象は選択的です。「昆虫に非選択的」ではありません。

また、芽胞形成時に殺虫性タンパク質を作り、タンパク質を幼虫が食べることで死亡します。「正常な脱皮、変態が進行しなくなる」わけではありません。選択肢 3 は誤りです。


選択肢 4 は妥当です。
キチン合成阻害剤についての記述です。


選択肢 5 ですが
一般に、 1 年の間に多くの世代を重ねる種の方が抵抗性発達例は多いと考えられます。選択肢 5 は誤りです。


以上より、正解は 4 です。

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