公務員試験 H30年 国家一般職(農学) No.17 解説

 問 題     

野菜の養液栽培に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1.養液栽培では培養液に含まれる窒素のほとんどがアンモニア態である。果菜類については、栽培期間を通して培養液の濃度を一定にして栽培するのが一般的である。

2.NFT は、緩やかに傾斜した栽培ベッドの底面に培養液を薄い膜状に流す方式である。湛液型水耕に比べ少ない培養液量での栽培が可能で、また、根が空気に触れる機会が多く、根への酸素供給が良いという利点がある。

3.ロックウール耕は湛液型水耕の一つで、綿状の軽量な鉱物資材を敷き詰めた栽培ベッドに培養液を満たして栽培する方法である。ロックウール耕は一般にミツバやレタスなど葉菜類の栽培に利用されている。

4.降水量が多い我が国では、養液栽培の培養液に用いる水は雨水が最も多い。また、循環式の水耕栽培では栽培中に培養液の殺菌が必要であり、一般には塩素による殺菌が行われているが、他にも熱、紫外線、オゾンガスを用いた殺菌方法がある。

5.培養液の温度が低くなると、飽和溶存酸素濃度が低下して、根が酸素不足になりやすくなる。トマトの尻腐れ果は、カリウム欠乏による生理障害の一つであり、培養液の温度が低いと発生しやすい。

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説     

選択肢 1 ですが
養液栽培の培養液に含まれる窒素には、硝酸態とアンモニア態があります。養液栽培では主に硝酸態の窒素を用います。「ほとんどがアンモニア態」ではありません。また、培養液の濃度は作物の養分吸収パターンに合わせて調整されます。「栽培期間を通して…濃度一定…が一般的」ではありません。選択肢 1 は誤りです。


選択肢 2 は妥当です。
NFT:nutrient film technique は、緩やかな傾斜のついた栽培ベッドに、培養液を少量ずつ流下させながら栽培するシステムです。対比されるのが DFT (Deep Flow Technique) です。培養液をある程度の深さで保つシステムです。


選択肢 3 ですが
湛液型水耕とは、DFT のことです。培養液をある程度の深さで保つシステムです。ロックウール耕は、玄武岩を高温で融解して繊維化したロックウールを土壌の代わりに固体培地として使用した養液栽培です。選択肢 3 は誤りです。


選択肢 4 ですが
養液栽培に用いる水 (原水) には 井水・上水が用いられることが多いです。雨水ではありません。選択肢 4 は誤りです。


選択肢 5 ですが
培養液の温度が低くなると、水に溶け込める酸素の量 (飽和溶存酸素量) が大きくなり、飽和溶存酸素濃度も上昇します。「培養液の温度が低くなると、飽和溶存酸素濃度が低下」ではありません。

また、トマトの尻腐れ果の主な原因は「カルシウム不足またはカルシウムの吸収不良」です。「カリウム欠乏」ではありません。選択肢 5 は誤りです。


以上より、正解は 2 です。

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