公務員試験 2020年 国家一般職(土木) 記述式 回答例

 問 題     

我が国は厳しい財政状況にあるとされており、インフラ整備にかかる経済的コストが問題視されることがある。その一例として、我が国は海外の他の国に比べ高速道路の建設費が高いことが指摘されることがあり、図は、2005 年の日本、米国、フランス、ドイツの単位 km 当たりの高速道路の建設費を表している。以上を踏まえ、以下の問いに答えよ。

(1) 我が国の国土の自然特性から、海外と比較してインフラ整備の経済的コストが高くなる要因を説明せよ。

(2) 我が国の厳しい財政状況の下、(1) を踏まえ、我が国においてどのようにインフラを整備・維持管理していくべきか、行政に携わる土木技術者の観点からあなたの考えを述べよ。なお、必要に応じて以下の語句を用いて述べてもよい(以下の語句を用いなくてもよいものとす
る。)。

[語句:民間活力、新技術の開発・活用、アセットマネジメント]

回答時間 1 時間

 解 説     

【問題文について】
「厳しい財政状況、インフラ整備にかかる経済的コストが問題視、一例として 他国と比べ高速道路建設費が高いことが指摘」、「図は km あたり高速道路建設費」などを読み取り『インフラ整備 というと幅広いが、高速道路に話題が絞られている』と意識できればよいと思われます。


【資料について】
・日本が米国、フランス、ドイツと比べて 単位 km あたりの高速道路建築費が高いこと
・工事費についても、用地費についても高いこと

・他の国では、用地費の割合が 米国 約 10%
フランス やドイツ は 1% に満たない一方で
日本は 20% 程度を占めている
※教養の資料解釈をふまえると、割合に注目する視点を加えたい

以上のような内容を読み取ることが期待されていると考えられます。


【設問について 答案構成の一例】
(1) 国土の自然特性からインフラ整備 経済的コスト高くなる要因を説明せよ

国土の自然特性
国土の大半が山、平坦ではない といった点をあげるのが自然と考えられる。小中学校の社会で「日本の地理の特徴」として何を習ったか 程度の基礎知識から 自然な発想として期待されると考えられる。

高速道路は、平坦で直線的道路 → 山を切り崩すなどの費用がかかるため、国土の大半が平坦である国と比較すれば高くなりそう。


※防災白書で「災害を受けやすい日本の国土」といった表現があるので、「国土」の自然特性として、地震等自然災害が多い という内容も多くの人があげることが予想される。「高い耐震性等が求められる」ため、適した用地取得にも費用が高くなる という点をあげる流れが自然と思われる。


(2) 語句はヒント、活用すべき 
「アセットマネジメント」は、意味があやふやなら使わない方がいいという印象。

アセットマネジメントの定義の一例は
「維持管理費を最小とするため、適切な時期・手法で補修補強等を行っていく管理計画及びその実行のこと」ぐらいです。

意味をしらなくても
「適切な補修を行っていく、既存施設の活用、価値最大化していく、民間活力の活用、新技術の開発・活用 具体的にはドローンの活用」といった主張に自然につながっていくと思われます。


【回答例】

(1) 我が国の国土の自然特性から、海外と比較してインフラ整備の経済的コストが高くなる要因を説明せよ。


(1) 
海外と比較してインフラ整備の経済的コストが高くなる要因は 2 点ある。

1 点目は、日本は山岳地帯が多い点である。我が国は国土の約 70 %が山で占められている。このため、高速道路整備の際に、山を越えたり急な地形に合わせて作らなければならないため、工事における工数や難易度が高くなる。具体的にはトンネル建設等が必要となり、それに伴う建設費用が海外と比較して膨らむ。

2 点目は、自然災害が多いからである。日本は地震が多いため、高い耐震性が求められる。地震対策として、構造物にかかる負荷を分散させるために高い技術力が必要となる。

以上のように、山がちな地形要因及び自然災害対策の必要性から、海外と比較してインフラ整備の経済的コストが高くなるといえる。


(2) 我が国の厳しい財政状況の下、(1) を踏まえ、我が国においてどのようにインフラを整備・維持管理していくべきか、行政に携わる土木技術者の観点からあなたの考えを述べよ。


(2)
日本のインフラ整備は、自然特性により海外に比べ割高なコストがかかる。厳しい財政状況の下、今後さらなる効率的整備と維持管理が求められる。そこで民間活力の活用が重要であると考える。

民間企業が持つ技術力や資金力を活かすことでコスト削減につなげることができる。例えば、PPP 方式を活用することで、民間企業の知見や技術を活かし、公共事業の品質向上と費用削減を実現できると考える。


また、新技術開発・活用が求められる。例えば、AI やドローンを用いたインフラ点検手法の開発、活用の推進である。

従来の手作業による点検作業をドローンを使って効率化することや、AI によるデータ解析を活用して老朽化したインフラの劣化状況をリアルタイムで把握する。これにより、従来の手間が大幅に削減されると共に、インフラの長寿命化を実現できる。


そして、アセットマネジメントを活用したインフラの効率的な管理も欠かせない。インフラ資産の現状把握と維持管理計画をしっかりと立てることで、必要なタイミングで適切な保守や修繕を行い、無駄なコストを減らすことができる。以上。

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