公務員試験 H28年 国家一般職(行政) No.5解説

 問 題     

利益団体に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.C.オッフェは,利益団体を市場団体と政策受益団体に分類した。市場団体には,市場制度から大きな利益を得る大企業を中心とした経済団体や大企業正社員の労働組合などが,また,政策受益団体には,規制や再分配といった政策から利益を得る農業団体,中小自営業の団体,福祉団体などが含まれるとした。

2.T.ロウィは,政策を規制政策,分配政策,再分配政策などに類型化したが,この政策類型に対応付けて利益団体の分類を行えば,規制政策には価値推進団体,分配政策には業界団体や消費者団体,再分配政策には福祉団体や医療・保健団体がそれぞれ対応することになる。

3.M.オルソンは,団体に所属するメンバーの数と,その団体の利益団体としての活動の活発さとの関連について考察し,メンバー数の多い団体ほど,そのメンバーが当該団体の影響力を大きく認識するため,メンバーの活動への参加がより盛んになり,結果としてその団体の活動が活発化するとした。

4.R.ソールズベリーは,利益団体は政治的企業家とメンバーの間の便益の交換によって成立し,その交換が継続する限り存続するとした。ただし,こうした役割を果たす便益は物質的・経済的な便益に限られ,メンバーは団体参加に伴う費用と便益を比較して,便益の方が大きければその団体にとどまるとした。

5.D.トルーマンは,利益団体の形成を導く基本的な要因はマクロな社会的変化であるとし,工業化や都市化に伴う社会的分化が利益や価値の多様化を通じて様々な利益団体を生み出し,また,既存の社会勢力間の均衡が崩れると,それにより不利益を被る社会集団の側からの圧力活動が盛んになると論じた。

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説     

選択肢 1 ですが
1文目は妥当です。オッフェは利益団体を、市場団体と政策受益団体に分類しました。2文目ですが、市場団体とは、消費者団体など、市場に関する利害を代表する団体です。「大企業正社員の労働組合」は違うと判断できるのではないでしょうか。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
T.ロウィの政策の類型化は妥当です。分配政策が、政策の影響が各個人や企業に独立して現れるもので、関税、補助金などがあげられます。再分配政策が、政策の影響が幅広く、社会階級を対象とするものです。累進課税などがあげられます。分配にも再分配にも分類されないものを規制政策としました。

この分類と利益団体は、それぞれ対応するとは考えられません。例えば、価値推進団体の一つである環境団体は、特定の企業への分配政策に対応するかもしれないし、環境税推進といった再分配政策に対応するかもしれません。選択肢 2 は誤りと考えられます。

選択肢 3 ですが
オルソンは集合行為問題について論じました。集合行為問題とは、複数の人間に共通の利益があっても、ただのりして利益を得ようとするフリーライダーになろうとすることで、協力が見られない、という問題です。利益集団の規模が大きい時に特に問題となります。一方で、現実には大規模利益団体が存在することについて、2つの要因として、「強制」と「選択的誘引」を指摘しました。「メンバー数が多い団体ほど・・・活発化」という論理ではありません。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
前半部分は妥当です。後半部分ですが、ソールズベリーは、便益を3つに分類しました。物質的誘引、連帯誘引、目的誘引です。連帯誘引や目的誘引は、心理的な誘引といえます。「便益は物質的・経済的な便益に限られ」るわけではありません。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 は妥当です。
トルーマンの理論についての記述です。

以上より、正解は 5 です。

コメント