公務員試験 H28年 法務省専門職員 No.19解説

 問 題     

心理学における質的研究に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1.川喜田二郎により開発された KJ 法では,林知己夫により開発された数量化 Ⅱ 類又は Ⅲ 類を用いて,ある事象に関連する定性的又は質的なデータを定量的に整理・解析することにより,その事象を説明するための新たな仮説を発想する。

2.ナラティブ研究は,最初にいくつかの仮説を立て,その中から,語られた内容と語るという行為が意味を生成する側面に注目して最も当てはまりの良い仮説を探し出す方法であり,仮説検討の際には,原則としてテキストマイニングを用いることとされている。

3.ディスコース分析とは,特定の言説の背景にある論理展開のルールを探求するアプローチのことで,先行研究により明らかになっている事項から導かれた仮説に基づき高度に構造化された質問を行い,それへの返答の展開過程を分析する。

4.グラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)は,グレイザーとストラウス(Glaser, B.G. & Strauss, A.L.)により開発された技法で,データの読み込み,事象の意味の最小単位への切片化,理論的比較,理論的サンプリングなどによる仮説生成を理論的飽和に至るまで繰り返す。

5.木下康仁によって開発された修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(MーGTA)では,GTA と同様にインタビューなどにより収集した語りという質的データを分析するが,標準的な分析手続として,データのカード化,グループ編成,図解化,叙述化のプロセスがある。

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説     

選択肢 1 ですが
KJ 法は、多量の情報を効率よくまとめる方法です。1枚の紙(ポストイットがよく用いられます。)に1枚の情報を書き、似たものをグループ化したりラベルづけしたり、関係性を見つけたりします。数量化は、数値ではないデータに対する多変量解析の手法です。KJ 法で、数量化という手法を用いるわけではありません。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
ナラティブ研究とは、人々の「かたり」を研究する質的研究の一種です。テキストマイニングは、文字列を対象としたデータ分析のことです。ナラティブ研究の仮説検討に原則テキストマイニングを用いるということはありません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
ディスコースとは、対話、言説といった意味です。ディスコース分析は、特定の言説の分析です。「高度に構造化された質問」に対する返答の展開過程を分析するものではありません。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 は妥当です。
グラウンデッド・セオリー・アプローチに関する記述です。

選択肢 5 ですが
「データのカード化→グループ編成→図解化、叙述化」という記述は KJ 法についてと考えられます。修正版グラウンデッド・セオリーの特徴は「切片化」を行わないという点です。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 4 です。

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