問 題
我が国は、平成 28 年 (2016 年) 熊本地震、平成 23 年 (2011 年) 東北地方太平洋沖地震 (東日本大震災) 、平成 7 年 (1995 年) 兵庫県南部地震 (阪神・淡路大震災) 等の大規模地震により甚大な被害を受けてきた。特に 2023 年は、大正関東地震 (関東大震災) の発生から 100 年の節目の時期であり、今後想定される大規模地震等による被害を最小化させるという覚悟を持ち、必要な対策を円滑に進めていかなければならない。行政に携わる土木技術者の観点から、以下の問いに答えよ。
⑴ 大規模地震が発生した場合に想定される課題を二つ挙げ、それぞれ簡潔に説明せよ。
⑵ ⑴で挙げた課題に対する対応策をそれぞれ一つずつ挙げ、それぞれ簡潔に説明せよ。
⑶ 大規模地震により被災した地域において、あなたが復旧・復興事業を進めていく立場にあるとしたとき、以下の問いに答えよ。
⒜ 次の復旧・復興事業 ①,② の中から一つ選び、その番号のみを明記せよ。
① 道路・鉄道・海岸・港湾等のインフラの復旧・復興 (被災前に比べて嵩上げや補強等を施した形で整備することとする。 )
② 高台への集団移転 (移転先の高台は、元の居住地から数km 離れた場所に、集団移転のために新たに造成することとする。 )
⒝ ⒜ で選択した事業の推進に反対意見を持つと考えられる利害関係者を一つ挙げ、その意見を簡潔に示せ。
⒞ ⒝ に対して、どうすれば理解を得ることができるか、具体的な合意形成プロセスについて、あなたの考えを述べよ。
解 説
【問題文、設問について】
・設問が細かく分けられている点、「簡潔に」と繰り返しある点が特徴的です。
・(1) について
大規模地震が発生した場合に想定される課題 2 つ が問われています。単なる地震ではなく「大規模」地震という点を意識した記述を行いたい設問です。
例「大規模 → 被害を受ける場所が大きい → 発電所や水源も被害を受ける可能性が高い → 大規模停電や広範囲の断水が想定される」
・(2) について
課題に対する対応策を「簡潔に」なので
短く説明することを意識します。
停電対策 → 通電再開までの非常用電源の準備
断水対策 → 水道管の耐震化推進 などが一例です。
・(3) について
(a) については「番号のみを明記」という指示に気をつけます。(b),(c) が浮かびやすい方を (a) では選ぶとよいです。② の利害関係者はわかりやすい印象です。
被害を受けた地域住民
「住み慣れた場所から離れたくない」という反対意見
これに対して
「今回の被害をふまえると、同じ地域に住み続けることの危険性が高いこと、経済的な保証について十分な説明を行うことなど、多面的な観点から、気持ちをしっかりと受け止めた上で説得を行っていくことが必要であると考える」といった流れが一例となります。
回答例
(1)
大規模地震が発生した場合に想定される課題は、大規模停電と広範囲の断水である。大規模な地震では、被害を受ける範囲が広いため、電気供給施設が被害を受ける可能性が高い。従って、大規模な停電発生が想定される。そして、大規模停電が生じると現代の生活は多くが麻痺してしまうため、対策が必要な課題である。
また、水源や水供給施設についても地震の影響を受けやすい。水の供給が絶たれると、即座に命の危険につながるだけでなく、排水処理が滞ることによる感染症蔓延などにつながるため、重要な課題である。
(2)
停電対応策として、通電再開までの非常用電源の準備を進めるべきである。また、断水対策 として、水道管の耐震化推進が必要である。
(3)
(a) ②
(b) 利害関係者として、被害を受けた地域の住民があげられる。「住み慣れた場所から離れたくない」という意見が想定される。
(c) 感情的な部分をしっかりと受け止めた上で、移転のメリットと、移転しない場合のデメリットを粘り強く伝えることで理解を得ることができると考える。
被害をふまえると、同じ地域に住み続けることの危険性が高いこと、経済的な保障について十分な説明を行うなど、多面的な観点から、気持ちをしっかりと受け止めた上で説得を行っていくことが必要であると考える。以上
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