問 題
図のように、水平面と角 θ (0 < θ < π/2) をなす粗い斜面上に置かれた質量 m の小物体を、斜面に沿って上向きに速さ v0 で滑らせたところ、小物体は最高点に到達して一旦静止した後、下向きに滑り始めた。
小物体が初めに置かれた位置に戻ってきたときの速さ vとして最も妥当なのはどれか。ただし、小物体と斜面の間の動摩擦係数を μ’ とする。
解 説
2 択までしぼれば十分な問題です。
まず、摩擦がなければ力学的エネルギー保存則より、初めの位置に戻ってきたときの速さは初速と同じ v0 です。本問では摩擦があり、力学的エネルギー保存則が満たされないため、選択肢 1 は誤りです。
次に、μ’ = 0.5、θ = 30° と具体的に考えます。sin 30° = 1/2、cos 30° = √3/2 ≒ 0.87 です。すると選択肢 2,4 の場合 √ の中身が 1 よりも大きくなります。「摩擦力が作用する方が、速くなって戻って来る」というのはおかしいと判断できるのではないでしょうか。
従って、選択肢 3 or 5 が正解です。
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以下は補足解説です。以下のように本番で解く必要はなく、この問題に時間をかけるならば、上の解説のように 2 択までしぼれば十分と思われます。
斜面上昇中 及び 下降中における小物体に作用する力は重力と摩擦力です。図示すると以下の通りです。F動摩擦力 = μ’ N は基礎知識です。
【斜面上昇中 → 停止】
斜面方向にかかる力が
-mgsinθ – μ’mgcosθ = -mg(sinθ + μ’cosθ) です。
F = ma より
-mg(sinθ + μ’cosθ) = ma です。a = -g(sinθ + μ’cosθ) です。
停止する時 v = 0 です。
v = v0 + at なので、停止するまでにかかる時間は
t = v0/g(sinθ + μ’cosθ)
変位 x = v0t + at2/2
= v02/g(sinθ + μ’cosθ) – v02/2g(sinθ + μ’cosθ)
= v02/2g(sinθ + μ’cosθ) だけ上昇して停止するとわかります。
※ v2 – v02 = 2ax を用いると、やや簡単に求めることができます。
【停止 → 斜面下降中について:初速 0】
斜面方向にかかる力が
mgsinθ – μ’mgcosθ = -mg(-sinθ + μ’cosθ) です。
F = ma より
-mg(-sinθ + μ’cosθ) = ma です。a = g(sinθ – μ’cosθ) です。
初速 0 なので、変位 x = at2/2 です。
x = v02/2g(sinθ + μ’cosθ) となる時の t を求めます。
v02/2g(sinθ + μ’cosθ) = g(sinθ – μ’cosθ)t2/2
t2 = v02 /g2(sinθ + μ’cosθ)(sinθ – μ’cosθ)
t = v0/g√(sinθ + μ’cosθ)(sinθ – μ’cosθ)
v = at
= g(sinθ – μ’cosθ) × v0/g√(sinθ + μ’cosθ)(sinθ – μ’cosθ)
= v0√(sinθ – μ’cosθ)/(sinθ + μ’cosθ)
以上より、正解は 3 です。
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