問 題
インフラ整備事業の評価において、費用対効果が用いられることがある。行政に携わる土木技術者の観点から、以下の問いに答えよ。
⑴ 次のインフラ整備事業 ①、②、③ の中から一つ選び、その番号を示すとともに、そのインフラ整備事業の効果として考えられるものを三つ挙げよ。
① 新幹線
② 高速道路
③ 河川堤防
⑵ ⑴で挙げたインフラ整備事業の費用として考えられるものを二つ挙げよ。
⑶ インフラ整備事業の評価には、費用対効果の大きさ以外の基準も絡んでおり、それらを踏まえ、総合的にインフラ整備事業の優先順位を判断する能力が求められる。
いま、あなたがインフラ整備事業の優先順位を判断する立場にあるとする。このとき、どのような基準により優先順位を判断するかあなたの考えを述べよ。
解 説
【問題文、設問について】
「インフラ整備事業の評価、費用対効果が用いられることがある」、「行政に携わる土木技術者の観点から」という前フリがあります。また、設問は (1) で効果、(2) で費用、(3) でその他の基準を含む判断 という流れです。
それをふまえると、(1) の 3 つからどれを選ぶかという点について、後に聞かれる「費用面」、及び、効果と費用をふまえ、それ以外の基準も含む総合的な優先順位の基準 について、見通しが立つものを選ぶことが望ましいと考えられます。
【直近の過去問を活かした答案構成】
直近の過去問 (2020 記述) を演習していれば、『高速道路』の費用について、工事費に加え、用地費がかかることを連想しやすかったと思われます。
効果を「一般的な道路の機能」あたりから書けそうであれば、後は維持費用の点や、防災の点も含めて総合的に考えた上でまとめることができそうです。
【インフラ整備効果についての基礎知識】
一般的なインフラの整備効果としては、フロー効果とストック効果という観点から考えるとまとめやすいです。
フロー効果は、公共投資の事業自体によって生産、雇用、消費といった経済活動が派生的に創り出され、短期的に経済全体を拡大させる効果です。一方、ストック効果は整備された社会資本が機能することで、整備直後から継続的かつ中長期にわたって得られる効果です。
「新幹線開通」
ストック効果:交通アクセスの向上を通じて持続的な経済発展を促進、観光地へのアクセスが改善されることによる観光客増加
フロー効果:直接的な雇用創出効果、新幹線駅周辺での開発プロジェクト等による、短期的地域経済への好影響
「河川堤防」
ストック効果:地域の防災力を向上させ、洪水被害のリスクを低減、自然環境との共生を図る取り組みにより、地域全体の価値を高める基盤
フロー効果:雇用創出効果
などがあげやすい所ではないかと思われます。
以上をふまえると
新幹線が比較的まとめやすく、直近過去問演習の記憶があれば、高速道路もまとめやすい。河川堤防については、研究室関連や選択科目から専門性が高く、特に書きやすい人が選ぶとよい題材ではないかという印象です。
回答例
(1)
①
インフラ整備事業の効果
1:交通アクセス向上を通じ、持続的な経済発展を促進する効果
2:観光地へのアクセス改善による観光客増加
3:工事に伴う雇用創出効果
(2)
用地取得費用
工事費用
(3)
私はインフラ整備事業の優先順位判断において、3 つの基準から判断する。1 つめは費用対効果の基準である。2 つめは生命を守る観点である。3 つめは経済成長への貢献度という観点である。
費用対効果の基準に基づく評価においては、短期的なフロー効果だけでなく、長期的なストック効果も考慮に入れた上で、費用を十分上回る効果が期待できる場合において優先順位を高く置くべきであると考える。
生命を守る観点に基づく評価では、国民の生命を守る防災面での貢献度合いを十分評価すると共に、生態系への評価も行うべきである。より多くの生命を守ることにつながるインフラ整備事業の優先度を高く見積もる必要がある。
経済成長への貢献度に基づく評価は、一部の集団の経済にのみ貢献することのないよう、できるだけ幅広い成長への貢献が期待できる事業に重きを置くべきである。
私は 3 つの基準に基づき総合的に評価を行い、インフラ整備事業の優先順位を判断する。以上
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