問 題
賃貸借に関する ア~オ の記述のうち,妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。
ア.賃貸人が賃借人の意思に反して保存行為をしようとする場合において,そのために賃借人が賃借をした目的を達することができなくなるときは,賃借人は,当該行為を拒むことができる。
イ.賃借人は,賃借物について有益費を支出したときは,賃貸人に対し,直ちにその償還を請求することができる。
ウ.賃借物の全部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合には,賃貸借は,これによって終了する。
エ.当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは,各当事者は,いつでも解約の申入れをすることができるところ,動産の賃貸借については,解約の申入れの日から3 か月を経過することによって終了する。
オ.賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは,賃貸人は敷金をその債務の弁済に充てることができるが,賃借人が,賃貸人に対し,敷金をその債務の弁済に充てることを請求することはできない。
1.ア,ウ
2.ア,オ
3.イ,ウ
4.イ,エ
5.ウ,オ
解 説
記述 ア ですが
民法第 607 条によれば、賃貸人が賃借人の意思に反して保存行為をしようとする場合において、そのために賃借人が賃借をした目的を達することができなくなるときは、賃借人は、契約の解除をすることができます。「当該行為を拒むことができる」わけではありません。
例えば「上の階から水が漏れる」という訴えがあり、上の階の人に大家さんが「ちょっと入って修繕するね」と言って来た場合に「いやいや人入れたくないし、絶対漏れてないし(自分のせいって思われたらやだし)、断る」とごねられた場合、それで断ってよいというのは不合理なので、当該行為を拒むことができるわけではない、ということです。記述 ア は誤りです。
記述 イ ですが
民法第 608 条 1 項より、賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができます。費用例としては、台風で割れたガラスの修繕費などです。そうでない場合は、第 2 項に定められており、賃貸人は、賃貸借終了時、償還義務があります。「賃借人が、直ちに償還を請求できる」わけではありません。記述 イ は誤りです。
記述 ウ は妥当です。
民法第 616 条のニ です。
記述 エ ですが
民法第 617 条 1 項 三号により、動産及び貸席の賃貸借は、解約の申入れの日から「1 日」経過で終了です。条文を知らなくても、動産なのに申入れから3ヶ月も猶予を与えるというのは不合理と感じるのではないでしょうか。記述 エ は誤りです。
記述 オ は妥当です。
改正民法第 622 条の 2 第 2 項です。
以上より、正解は 5 です。
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