2020年 国家一般職(電気・電子・情報) 記述 回答例

 問 題     

近年、環境負荷の低減のために、太陽光や風力、潮力、潮汐、地熱、バイオマスなどの再生可能エネルギーを利用した発電システムへの関心が高まっている。また、我が国では、再生可能エネルギーが、災害時における電力の安定供給確保にも寄与できるものと期待されている。

今後は、再生可能エネルギーによる分散型電源と、大規模の発電所から送電するこれまでの電力系統とを組み合わせることにより、どのように高度で持続可能なシステムを構築していくかが重要となるであろう。

このような状況における再生可能エネルギーの可能性や将来性について、電気・電子・情報分野の技術者や行政官の立場から論ぜよ。

解答に際しては、具体的に、 1 再生可能エネルギーを一つ挙げ、 2 その利点と欠点、 3 導入拡大のための現時点での課題とその解決策について言及すること。

 解 説     

【問題文について】
・再生可能エネルギーを利用した発電システムへの関心が高まっている
・再生可能エネルギーが、災害時電力の安定供給確保に寄与することが期待
・今後、再生可能エネルギーによる分散型電源+これまでの大規模発電所の組み合わせが重要

このような状況における再生可能エネルギーの可能性や将来性について論ぜよ なので、上は前フリ。


『具体的に

1 再生可能エネルギーを一つ挙げ
2 その利点と欠点
3 導入拡大のための現時点での課題とその解決策について言及』と詳しく書くべきことが指定されているので


【前フリ:問題文前半を少し表現を変えて】
カーボンニュートラルの実現や、災害時電力供給源などの用途に再生可能エネルギーの活用が期待され、関心が高まっている。今後は再生可能エネルギーによる分散型電源と、既存電力システムのベストマッチが追求されていくであろう。

【指定の流れに乗って】
このような状況において、◯◯を取り上げ、以下、再生可能エネルギーの可能性や将来性について論じる。

◯◯の利点は・・・
◯◯には、・・・という欠点があげられる。

◯◯の導入拡大のための現時点での課題は・・・である。
課題の解決のためには、・・・が必要である。

課題解決の結果、◯◯がより普及し、再生可能エネルギーが活用されることで、・・・が実現すると考える。以上

といった流れ、型で文章を展開することが求められていると考えられます。取り上げるものとしては、太陽光、風力が思いつきやすい印象です。


【再生可能エネルギーに関する基礎知識】
法における定義:非化石エネルギー源のうち、エネルギー源として永続的に利用できると認められるもの

具体的な種類:
(1)太陽光、(2)風力、(3)水力、(4)地熱、(5)太陽熱、(6)大気中の熱その他の自然界に存在する熱、(7)バイオマス(動植物に由来する有機物) の 7 種類(施行令第4条)。利用の形態は、電気、熱、燃料製品。とされています。

こういった定義の暗記は不要です。「石油・石炭などではなくて、太陽光や風力で、環境にやさしい」ぐらいのふわっとしたイメージで十分と思われます。

再生可能エネルギーの大きな特徴は「枯渇しない」「どこにでも存在する」「CO2 を排出しない (増加させない)」の 3 点がよくあげられます。


回答例

カーボンニュートラルの実現や、災害時電力供給源などの用途に再生可能エネルギーの活用が期待され、関心が高まっている。今後は再生可能エネルギーによる分散型電源と、既存電力システムのベストマッチが追求されていくであろう。

このような状況において、風力を取り上げ、以下、再生可能エネルギーの可能性や将来性について論じる。

風力の利点は 2 点ある。1 つ目は、エネルギー変換効率が高い点である。2 点目は、環境負荷が小さい点である。一方、風力には、風力発電に用いる風車の騒音やメンテナンスが容易・安価ではないという欠点があげられる。

風力を用いた発電システムの導入拡大について、現時点での課題は、設置場所の確保である。ある程度強い風が吹き、騒音も問題にならないといった複数の条件を満たす場所でなくてはならない。課題の解決のためには、技術的イノベーションが必要である。具体的には、騒音低減技術の開発や、洋上風力発電の推進である。

より高度なノイズキャンセル技術が安価・簡便に実装できれば、騒音問題は解消される。また、人が住む地域からある程度離れた洋上での風力発電を実現することによっても、騒音問題が解決できると考えられる。

課題解決の結果、風力発電がより普及し、再生可能エネルギーが活用されることで、カーボンニュートラルや、災害時においても、安定した電力供給が実現すると考える。以上

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