公務員試験 2019 (R1) 年 国家一般職 (農学) No.9 解説

 問 題     

イネ科作物の早晩性に関する記述 A~D のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。

A.イネ品種の早晩性には、生殖成長期の長さ、感光性、感温性が関与している。イネでは早晩性に関与する遺伝子座 Sd1 が特定されている。

B.コムギは、花芽分化に必要な生育初期の日長の違いである秋播性程度が品種により異なる。実験的に高温長日条件で生育させたときに、秋播性程度が高い品種は生育初期に短日処理した場合のみ出穂する。

C.穎や子房などの生殖器官を分化している成長点で、減数分裂を開始することを生育相の転換という。日中の最大日射量に反応して生育相の転換が起こる性質を感光性という。

D.緯度が高く、夏の日長が長い東北や北海道で栽培されているイネ品種は、感温性は高いが、感光性は低い。これらの地域で感光性の高い品種を栽培すると、出穂が遅れ、十分に登熟しないおそれがある。

1.A
2.B
3.D
4.A、D
5.B、C

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説     

記述 A ですが
イネの遺伝子 Sd1 は、イネの背丈を低くする遺伝子 (半矮性化遺伝子) です。「早晩性」に関与する遺伝子ではありません。記述 A は誤りです。


記述 B ですが
麦類が出穂・開花するために必要な低温要求程度 が 秋播性 (あきまきせい) です。短日処理とは「長い暗期を与える」処理です。秋播性が高い品種の出穂に必要なのは「長い期間の低温環境」です。そのため、生育初期に短日処理することと出穂に関係はないと考えられます。記述 B は誤りです。

A,B が誤りなので
選択肢から C も誤り、D のみ妥当とわかります。C は「日中の最大日射量」ではなく「日照時間」が妥当です。


記述 D に関連して、感光性・感温性の高低と栽培地域の関係について、H30 no8 選択肢 1 も復習しておくとよいです。解説一部を改めて引用しておきます。

北日本など寒冷地は 1 年の大半が寒いので、ある程度栄養成長したらさっさと穂をつけてくれないと、寒さによる登熟障害のおそれがあります。そのため、感温性が高い、感光性が小さい品種が適します。

寒冷地で「感光性が大きい品種」を栽培すると、日長が短くなってからしか幼穂形成期に入りません。すると、穂が出るころに秋冷の時期となり、登熟障害の可能性が高くなります。

一方、西日本などの暖地では、暖かいので不十分な栄養成長段階で穂が出てしまいがちです。つまり「穂が出る前の栄養成長期間を十分に確保すること」が肝要です。そのため、寒冷地とは逆に 感温性は低く、感光性が高い品種が適しています。


以上より、正解は 3 です。

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