公務員試験 2019 (R1) 年 国家一般職 (農学) No.8 解説

 問 題     

作物の種子や発芽に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1.登熟中の子実が穂の中で発芽することを穂発芽という。コムギでは穂発芽により胚乳のデンプンが分解されて低アミロ化して品質が著しく低下する。また、イネでは穂発芽した粒は被害粒に分類される。

2.イネの種子の胚乳の最外層には厚壁細胞があり、細胞壁の厚い小型の細胞が並んでいる。発芽時には、これらの細胞では、胚から分泌されたオーキシンに反応して胚乳養分を分解する酵素が作られる。

3.イネの種子中では、幼芽は鞘葉に包まれ、第 1 葉から止葉までの原基が既に分化している。また、 1 本の幼根が分化しており、発芽とともに根鞘を破って飛び出し、冠根となる。

4.種子に適した籾は、油脂成分の多い胚が大きく比重が小さいので、食塩水などで比重選を行う。浸種によって十分に水を吸った種籾を最適な温度に置き、発芽を促すことを休眠打破という。

5.イネの種子は、湛水した水田土壌中のような低酸素条件では発芽できない。湛水土中直播では、酸素を供給するために、酸化鉄で覆われた鉄コーティング種子を用いる。

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説     

選択肢 1 は妥当です。
穂発芽 (ほはつが) についての記述です。


選択肢 2 ですが
イネの種子の胚乳の最外層は糊粉層です。発芽時には、胚で合成された「ジベレリン」が糊粉層に分泌され、アミラーゼが合成されます。アミラーゼは胚乳のデンプンを糖に分解します。「オーキシン」に反応ではありません。選択肢 2 は誤りです。


選択肢 3 ですが
イネの種子中では、幼芽は鞘葉に囲まれ、内側に 3 枚の幼葉ができています。「第 1 葉から止葉までの原基が既に分化」ではありません。また、幼根は種子根として成長します。冠根は、幼根以外に茎の基部から多数発生する根です。そのため「幼根が・・・冠根となる」わけではありません。選択肢 3 は誤りです。


選択肢 4 ですが
種子に適した籾は、胚乳がしっかり詰まった比重が相対的に大きい籾です。「種子に適した籾は・・・比重が小さい」わけではありません。選択肢 4 は誤りです。ちなみに、発芽を促すことを休眠打破というのは妥当な記述です。


選択肢 5 ですが
前半の記述は妥当と考えられます。「発芽できない」は若干強すぎる表現と思われますが、イネの種子は、湛水した水田土壌中では著しく発芽しづらいです。

後半部分ですが、代表的なコーティング資材は 「カルパー」、「鉄」、「べんがらモリブデン」です。「酸素を供給する」コーティングは「カルパーコーティング種子」です。鉄コーティング種子ではありません。選択肢 5 は誤りです。


以上より、正解は 1 です。

コメント