問 題
植物における物質輸送に関する記述として最も妥当なのはどれか。
1.細胞壁にはアクアポリンと呼ばれるチャネルが存在し、水とタンパク質の透過性に大きな役割を果たしている。この機能によって水とタンパク質の透過性が約 10 倍高まることが知られている。
2.根の内皮にはペクチンなどの脂質が蓄積したカスパリー線と呼ばれる構造がある。水やイオンはカスパリー線を通過できるが、高分子化合物はカスパリー線で遮断される。
3.蒸散によって気孔から水が失われると、葉肉細胞の水ポテンシャルが木部の水ポテンシャルよりも低下する。その結果、木部から葉肉細胞へ水が移動する。
4.光合成産物を供給する器官のことをシンク、受容して利用・貯蔵する器官をソースという。光合成産物は細胞どうしをつなぐ原形質連絡を通じたアポプラストを経てソース器官へと運ばれる。
5.維管束は主に木部と師部で構成されており、木部は道管、伴細胞、木部柔細胞から構成されている。道管は、生きた細胞から成り、水や無機養分の通道が行われている。
解 説
選択肢 1 ですが
アクアポリンは細胞膜に存在する、水分子の透過を担う水チャネルタンパク質です。水「とタンパク質」の透過性に大きな役割ではありません。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
カスパリー線は、植物の根の内皮細胞に形成される疎水性のバリアです。「水を通しません」。また、リグニンが蓄積した構造体です。「ペクチン」ではありません。不要な物質の侵入や、吸収した栄養分の漏れ出しを防ぐ役割を果たしています。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 は妥当です。
蒸散による水の移動についての記述です。
選択肢 4 ですが
光合成産物を供給が「ソース」、受容して利用・貯蔵が「シンク」です。逆になっています。選択肢 4 は誤りです。
また、アポプラストは、植物細胞の細胞壁と細胞間隙の総称です。細胞膜よりも外側の部分を指します。シンプラスト (細胞膜の内側) と対をなす概念です。
そして、原形質連絡またはプラスモデスムは「細胞壁を横切り、細胞間の輸送やコミュニケーションを可能とする微視的チャネル」です。細胞膜内側の物質の流れなのでシンプラスト経路の一種です。従って「原形質連絡を通じたアポプラスト」ではありません。
選択肢 5 ですが
道管や仮道管は死細胞からなる組織です。選択肢 5 は誤りです。ちなみに道管と仮道管の違いは、境界細胞壁の有無です。道管は境界細胞壁が消失しています。
以上より、正解は 3 です。

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