R7年 水質有害物質特論 問2 問題と解説

 問 題     

キレート剤を含む重金属排水の処理に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. キレート剤の存在量が多くなると、pH調整のみの単純な水酸化物法では重金属は処理できなくなる。
  2. キレート剤の濃度が低くなると錯体は不安定となる。
  3. キレート剤の影響は、キレート剤の種類、重金属の種類及び濃度により一様ではない。
  4. 置換法は、キレート剤で封鎖されている重金属を他の金属で置換し、置換された重金属を水酸化物として沈殿させる方法である。
  5. Fe+Ca塩法においては、重金属はまずCa2+によって置換され、その後Fe2+によって置換される。

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説     

(1)は正しいです。キレート濃度が高いと金属イオンは錯体を形成するため、単なるpH調整では水酸化物として析出させにくくなっています。このような場合には、(4)の置換法や硫化物法などの処理が必要となります。

(2)も正しいです。錯体形成の平衡はキレート剤の濃度に依存するため、キレート剤の濃度が下がると錯体ができない方向(金属が遊離する方向)に平衡が傾きます。

(3)も正しいです。キレート剤と重金属の組合せや濃度によって、錯体形成のしやすさが変わります。そのため、主に処理したいと考えている重金属に合ったキレート剤を選ぶことが重要です。

(4)も正しいです。置換法は、キレート剤で封鎖されている重金属を他の無害な元素で置換し、置換された重金属を水酸化物として沈殿させる方法のことです。置換法にはMg塩法とFe+Ca塩法の二つがあります。

(5)が誤りです。Fe+Ca塩法は以下のような2段階の反応で構成されます(例として重金属を鉛Pbとしていますが、ほかの重金属でも同様です)。Fe+Ca塩法という名前の通り、1段階目でFeを、2段階目でCaを使っています。

  • 1段階目(酸性条件)

  • 2段階目(塩基性条件)

よって、(5)の記述は「Ca2+」と「Fe2+」が反対になっています。

以上から、正解は(5)です。

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