R7年 水質有害物質特論 問1 問題と解説

　問 題　　　　　

重金属排水を凝集沈殿処理するために使用されるアルカリ剤について、その中和特性や使用上の注意事項に関する記述として、誤っているものはどれか。

1. ソーダ灰(炭酸ナトリウム)によるカドミウムの処理において、炭酸イオン濃度を過剰にすると沈殿物は分散傾向になる。
2. 石灰石(炭酸カルシウム)は、消石灰(水酸化カルシウム)と比べて中和速度が速い。
3. 消石灰(水酸化カルシウム)は、乳液として使用するため、薬注配管での沈殿防止対策が必要である。
4. 水酸化マグネシウムは、消石灰(水酸化カルシウム)と比べて多くの重金属水酸化物に対して汚泥減容効果がある。
5. カセイソーダ(水酸化ナトリウム)は、液状で使用でき、中和速度が速いためpH調整が容易である。

 

 

 

 

 

　解 説　　　　　

(1)は正しいですが、あまり重要ではないです。Cdは炭酸塩(CaCO₃)として沈殿しますが、CaCO₃^2－を過剰にすると粒子表面が陰電荷で被覆され、微細化・分散傾向となり凝集性や沈降性が悪化しやすくなります。

(2)が誤りです。石灰石(CaCO₃)は難溶性の塩なので、中和速度は遅いです。一方で、消石灰(Ca(OH)₂)はその構造からわかるように塩ではなく、水に溶けて強いアルカリ性を示します。よって、消石灰(Ca(OH)₂)のほうが中和速度が速いといえます。

(3)は正しいです。カセイソーダ(NaOH)は水に溶けて液状になるので貯槽や配管に留まる心配があまりありませんが、消石灰(Ca(OH)₂)や水酸化マグネシウム(Mg(OH)₂)は乳液として使うので、配管の途中などで沈殿しやすいため注意が必要です。

(4)も正しいです。ややマイナーな知識ではありますが、水酸化マグネシウムを使った置換法であるMg塩法は、汚泥減容効果やCOD吸着性などの優れた特性を有します。

この知識を押さえておくのであれば、消石灰との比較で覚えるのではなく、水酸化マグネシウム自体が汚泥減容効果に優れることを押さえておいてください。

(5)も正しいです。カセイソーダ(NaOH)は水に溶けやすく強アルカリ性を示すので、記述の通り容易にpH調整を行うことができます。

以上から、正解は(2)となります。