R7年 大規模水質特論 問10 問題と解説

 問 題     

製紙工場における製造工程及び排水処理に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. 蒸解工程では、木材繊維同士を固める役割を果たしているリグニンが分解される。
  2. 蒸解工程に用いる白液は、水酸化ナトリウムと硫化ナトリウムの混合溶液である。
  3. 黒液には可溶化したリグニンとヘミセルロースが含まれるとともに、蒸解に用いたナトリウムと硫黄が含まれる。
  4. ECF漂白では、木材繊維に付着残存していたリグニンをアルカリ性・加圧条件下で、塩素ガスを用いて分解する。
  5. 排水へのBOD負荷を削減するため、漂白工程へのリグニンなどの不純物の持ち込みを減らすことが重要である。

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説     

(1)と(2)はともに正しいです。蒸解工程では木材チップに含まれるリグニンを分解するのが目的です。これには白液という薬品が用いられますが、その成分は「水酸化ナトリウムと硫化ナトリウム」です。

(3)も正しいです。木材から紙となる繊維を取り除くと、リグニンという物質が残ります。このリグニンやそれが変質したもの、製紙工程で使った薬剤、その他樹脂などが混じりあったものを濃縮したものが黒液です。

よって、黒液にはリグニンや木材繊維由来のヘミセルロース、白液由来のナトリウムと硫黄が含まれます。

(4)が誤りです。漂白工程では、塩素ガスを用いず、二酸化塩素を主体とするECF(Elemental Chlorine Free)漂白方法を用いることで、有機塩素化合物の副生を抑えることができます。

(5)は正しいです。リグニンが多いほど排水中のBOD負荷が大きくなるため、蒸解を均一にし、パルプの洗浄や酸素脱リグニンによって漂白工程へのリグニンなどの不純物の持ち込みを減らすことが重要です。

以上から、正解は(4)となります。

コメント