R7年 大規模水質特論 問9 問題と解説

 問 題     

食料品製造業からの排水やその処理に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. 事業場の規模が様々であり、また一事業場で多数の製品を製造する場合があり、製品ごとに排水の水量や水質が異なることがある。
  2. 生物分解しやすいBOD成分が多いため、活性汚泥法などの生物処理方式が多く採用されている。
  3. ビール工場の各工程から排出される廃液は、醸造系の廃液に容器充塡工程の廃液が加わり、総合排水として処理される。
  4. ビール工場の排水処理としては、従来から活性汚泥法が採用されてきたが、曝気(ばっき)が不要な上向流式嫌気汚泥床(UASB)を活性汚泥処理の後段で採用する二段処理も採用されるようになった。
  5. 清涼飲料工場からの排水中の有機物は、糖質と有機酸がほとんどであり、容易に生物分解できる。

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説     

(1)は正しいです。重要事項を含む選択肢ではありませんが、書かれていることが基本的な内容で、かつ、特に矛盾点もないため、正しい記述だと判断しやすいと思います。

(2)と(5)はともに正しいです。食料品製造業からの排水中には糖質や脂質などの有機物が多く含まれ、そのうち清涼飲料工場では糖質と有機酸が有機物のほとんどを占めます。よって、排水の処理対象物質は主にBODとなり、活性汚泥法などの生物処理方式が有効です。

(3)も正しいです。ビール工場では、ビールそのものを造る工程で出る排水と、容器に充填する際に出る排水とがあります。どちらの排水もCODが高いので処理が必要であるため、それらの総合排水を処理対象とします。

(4)が誤りです。ビール工場の排水にはCODなどが大量に含まれているため、活性汚泥法(好気処理)単独処理にすると酸素(≒曝気動力)もたくさん使う上、余剰汚泥も多く発生してしまいます。そのため、「UASB法+活性汚泥法」という二段処理が広く採用されています。

UASB(上向流式嫌気汚泥床)の特徴として、この方法は高濃度有機排水の処理に有用ですが、基準値以下まで一気に下げることは難しいです。よって、UASBで大雑把にCODを除去して、後処理として活性汚泥法などを行うのが一般的です。

ここで、(4)の記述では活性汚泥処理の後段でUASBを用いるように書かれていますが、これでは前後が反対となっていて非効率な処理になってしまいます。

よって、正解は(4)です。

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